コロナ猛威続く 特派員から見た海外

オミクロン株などの新型コロナウイルスが世界各地で猛威を振るう中、2022年を迎えた。中国で最初に確認されてから丸2年。地域情勢を追う特派員たちに、コロナがらみの苦労話や、感染の影響を大きく受ける街の様子などをつづってもらった。

接種義務化でギクシャク ニューヨーク 平田雄介

ニューヨーク市の雰囲気は今、少しギクシャクしている。先月27日、全ての民間企業で従業員の新型コロナのワクチン接種が義務化されたのが原因だ。

知人の会社では、ベテラン社員が「接種を強制されるなら退社する」と宣言した。会社としては法令を守る必要がある。知人は「転職するにも市内の会社はどこも義務化の対象だ。もう少し考えたら」となだめたが、社員は「別の街に引っ越す」とかたくなだった。

18歳以上の住民の1割弱は未接種だ。街頭で出会った男性(43)は「いくら優秀なワクチンでも10年後にどんな副作用があるか分からない」とし、自らの免疫力を高め、コロナと闘うことにした。サプリを摂取し、家の近所を走っている。ジムに通わないのは、接種証明書が必要だから。同じ理由で外食も「半年していない」。

3回目の接種を済ませた男性(32)は最近、「冬休みにフランスを旅行する」ためPCR検査場を訪れた。未接種の同僚に関し「受けない自由はあるけど、接種することで感染から同僚を守り、事業を継続させる責任もあるよね」と話す。接種義務はワクチン推進派、懐疑派の心理的な溝を広げている。

「感染対策」口実に退去も 北京 三塚聖平

新型コロナの世界的蔓延(まんえん)前、北京は日本までのフライト時間が比較的短いこともあって、年末年始に一時帰国し家族との再会を楽しむ日本人駐在員が多かった。だが今、わずかな感染拡大も許さない「ゼロコロナ」政策をとる中国では、一時帰国は険しい道のりだ。

中国入国者は、2~4週間にもわたる専用施設での隔離が必須だ。部屋から一歩も出られないのに、施設が位置する街で感染者が確認されれば、隔離期間が延びる恐れもある。「一時帰国は大変なので北京で新年を迎える」という駐在員が多く、わが家も同様だ。

外国メディアにとって中国は厳しい取材環境にあるが、最近では「感染対策」を口実にさらに障壁が高くなったと感じる。昨夏、共産党指導部や長老らが集まる非公式会議を取材しようと河北省北戴河(ほくたいが)に行った際には、鉄道改札口を出て数分後、私の旅券を調べた私服警官から「感染者が出た街に行っていたことが分かった」と、現地からの即刻退去を求められた。その街を訪れたのは2週間以上前で、感染者が出たのは記者の訪問後だったにもかかわらずだ。

困難が増している中国特派員生活だが、今年も現地の姿をしっかり伝えたい。

豪華ドレスより再生品? パリ 三井美奈

フランスでは新型コロナが再流行している。昨年末、友人が帰省前に感染検査を受けたら、陽性判定が出た。「ワクチンの追加接種を受けた2日後だったのに…」と衝撃を受けていた。取材相手からも、いきなり「感染したので、当面会えない」と連絡があった。変異株オミクロンの猛威なのか。クリスマス前、街頭の検査所には、どこも長蛇の列ができていた。

一方、ワクチン接種証明があれば、どこでも行けるようになったので、歳末商戦は活気づいた。2020年末は夜間外出禁止令が続き、飲食店が閉鎖されていたことを思い出すと、自由のありがたさを実感する。

コロナでパリの風景は少し変わった。例年ならこの時期、ショーウインドーに豪華ドレスや蝶(ちょう)ネクタイが並ぶのに、パーティーが減ったせいか、あまり見当たらない。老舗百貨店に行くと、最上階が再生品売り場になっていたから驚いた。

環境ブームに加え、在宅勤務が増えたので、モード界も「日用品を大事に使う」というのがトレンドらしい。再生品といっても、高級ブランドの古着を仕立て直したものなどで、値札を見ると1200ユーロ(約15万円)。新品並みだった。

取材制限 1人で2人飯 ソウル 時吉達也

2021年の春、東京に家族を残し、単身でソウルに赴任した。2週間の自宅隔離で運動不足になったためか、隔離解除の直前、ぎっくり腰を発症する最悪のスタートとなった。

厳しいコロナ規制のため直接取材は当初から制約が課され、7月には夜間の会合が2人までに制限された。やむなく1人で食事することも増えたが、韓国は基本的に「ひとりめし」の文化がない。1人で入った焼き肉店で、2人前以上注文するよう求められることにもすっかり慣れた。

それでも記者として昼間などに人と会い、地方取材などにも行った私は、幸せな方だ。規制が一時的に緩和された11月、日本人駐在員向けのツアーで一緒になった30代の男性会社員は、20年春の韓国赴任以降、感染を警戒し「自宅と職場の往復」のみの毎日。「今回が最初で最後の地方旅行です」。日本に近く帰国するのだと、残念そうに話した。

大統領選が2カ月後に迫る韓国。コロナ禍で閉塞(へいそく)感に覆われた社会に変化は生じるのか。離れて暮らす1歳の娘とのビデオ通話に活力をもらいながら、隣国の「今」に迫る取材をしっかり進めていきたいと思っている。

自炊の種類 少し増えた カイロ 佐藤貴生

2021年12月中旬の昼過ぎ。エジプトの首都カイロ中心部の一角に人だかりができていた。新型コロナのワクチン接種を受けられる臨時の会場に来た人々だ。接種を主催していたのは親シーシー大統領の与党、祖国の未来党だ。

「保健省と協力してボランティアで行っている。昨日は米ファイザー製を120人以上に接種した。外国人も受けられる」

アハマド・アーセム地区事務局長(45)が説明した。

英統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、エジプトで少なくとも1回の接種を受けた人は30%超。政権は12月から未接種者の役所への立ち入りを禁じるなど、接種拡大に躍起になってきた。ようやく効果が表れつつある。

1日当たりの新規感染者は約900人、死者は50人前後で、現在は感染の第4波の最中だが、街中のマスク着用者は半数程度。だから、こちらが気を引き締めなくてはならない。

筆者はカイロで英アストラゼネカ製を2回受け、食堂でも屋外のテーブルを予約するなど予防に努めている。鳥のから揚げやカルボナーラなど、ほんの少しだが自炊のレパートリーも増えた。