年のはじめに

さらば「おめでたい憲法」よ 論説委員長・乾正人

初詣に多くの参拝客が訪れた明治神宮=1日午前、東京都渋谷区(川口良介撮影)
初詣に多くの参拝客が訪れた明治神宮=1日午前、東京都渋谷区(川口良介撮影)

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

こういうありふれた祝詞が書かれた年賀状を一枚一枚眺めるのが、正月の楽しみの一つだが、あっという間に終わるようになった。まぁ、人付き合いも悪いし、嫌われてもいるから、とあきらめてはいるが、日本全体でも最盛期の半数以下に激減してしまった。ピークは平成15年で、44億5936万枚も発行されていたのが、令和4年用の当初発行枚数は18億2536万枚。国民1人当たり35枚も出していたのが、今では14・5枚と約4割に落ち込んだ。

最大の要因は、スマホの急速な普及によってSNS全盛時代になり、手間暇かけて新年を寿(ことほ)ぐためだけに年賀状を書く若者が激減してしまったことだ。若者でなくとも長引くコロナ禍で、「おめでたい」気分になれない人々を気遣ってやめた、という会社も知り合いも結構多い(会社の場合は、経費削減の意味合いが強いが)。

だが、この国は「おめでたい」国なのだ。本当に。正月くらいまずは、明るい話をしたい。


コロナ禍でも寿命延び


世界保健機関(WHO)が、昨年発表した最新の世界保健統計によると、日本人の平均寿命は84・3歳と、2位のスイスに1歳近く差をつけて堂々の1位に輝いた。ちなみに米国は40位で、中国は48位。米国に至っては、77・0歳(2020年)になり、コロナ禍によって1・8年も縮んでしまった。日本では、コロナ禍でも寿命は延び、いま生まれた赤ん坊は、米国より7年以上も長生きできる計算になる。

大幅に出遅れたコロナワクチン接種も今や8割近くの国民が打ち終わり、接種率は世界トップクラスとなった。

個人が保有する金融資産も1999兆8千億円と前年より5・7%も増えた。国民1人当たり1600万円近くもあり、世界第2位なのだ(筆者に縁はないが)。

何よりも戦後76年以上にわたって、他国と干戈(かんか)を交えることなく、のほほんと平和に過ごせたのがめでたい。

問題は、あまりにも平和が長続きしたため、「いざ鎌倉」となった場合の備えが、まったくできていないことだ。

「有事」における政府の初動対応のまずさは、阪神大震災や東日本大震災、それにコロナ禍が実証してしまった。2つの大震災を教訓に地震や風水害への対策は曲がりなりにも前進したが、「戦争」に対する備えは遅々として進んでいない。

今年は日中国交正常化50周年にあたる。この間、天安門事件で欧米諸国から孤立した中国を円借款再開と天皇陛下訪中で救ったのは、ほかならぬ日本政府なのである。「おめでたい」にもほどがある大失策だったが、事件から三十余年で中国は強大な「モンスター国家」となり、世界の脅威となった。その現実から目を背けている日本人は少なくない。


警戒せよ「習近平の夢」


日本学術会議が出した声明のように大学で軍事研究をするのは罷(まか)り成らぬ、という風潮は強く残る一方で中国に渡って人民解放軍の増強に手を貸す研究者が後を絶たない。

世界は、米国を中心とした「民主主義国家」と中露を主軸とした「強権国家」が対(たい)峙(じ)する新たな冷戦時代に突入した。

両陣営が角逐する最前線が、ウクライナと台湾であるのは論をまたない。習近平国家主席が目指す「台湾統一の夢」を甘く見てはならない。香港での先例が示すように、「台湾有事」がごく近い将来起きる可能性は、かなりある。

もしもの事態が起きた場合、台湾在留邦人や尖閣諸島を抱える先島諸島住民の避難をどうするのか一つとっても何の準備もできていない。

憲法や現行法が有事対応の邪魔をしているのであれば、改めるのが政治家の使命である。国権の最高機関である国会は、今年こそ真剣に憲法改正を論議せねばならない。

「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」国民の安全を図ろうという「おめでたい」憲法は、もう要らない。