オタフクカレンダーが綴るお好み焼きがある日常

令和4年の「お好み焼繁盛カレンダー」に笑顔を見せる梶山敏子さん=広島市南区の「KAJISAN」
令和4年の「お好み焼繁盛カレンダー」に笑顔を見せる梶山敏子さん=広島市南区の「KAJISAN」

お好み焼きのソースで知られる「オタフクソース」(広島市西区)が毎年発行しているカレンダーが、令和4年版で21作目を迎えた。その名は「お好み焼繁盛カレンダー」。オタフクソースが、お好み焼き店へのノベルティーとして活用してきた週めくりカレンダーだ。特徴は、どの週にも「お好み焼」の言葉が入った一文が添えられていること。たわいのないシーンを描いた日常の一幕。だが、ときにほっこりと、ときにはじんわりと、なぜか心に響いてくる。

令和4年版の「お好み焼繁盛カレンダー」(オタフクソース提供)
令和4年版の「お好み焼繁盛カレンダー」(オタフクソース提供)

令和4年は赤基調に

令和4年版「お好み焼繁盛カレンダー」は大きさが縦40センチ、横15センチ(台紙含む)で、今回はイラストレーターのミヤギユカリさんが初めて採用された。

表紙には「ひとりでも ふたりでも みんなでも、お好み焼。」の一文。これまではソースの色である茶色を基調とすることが多かったが、今回は明るい赤色を基調とし、「日々感じること、目にする出会いを大事に作品作り」(ミヤギさんのHPから)をしているというミヤギさんの心温まる優しい筆遣いで描かれているのが特徴だ。

例えば、6月のある週は「君と一生、団らんすることを誓います、お好み焼。」という一文に、パパとママと肩車される子供がほほ笑んでいるイラスト。7月の週は「おかわり!お好み焼。」の一文に、大きなヘラを手に、にっこり笑う男の子のイラスト。思わず笑みがこぼれる。

21作目のロングラン

「季節ごとの行事や家族でのだんらんなど、日常に登場するお好み焼きのシーンを描いてきた」と、オタフクホールディングス広報部の清水美希さん。

「お好み焼繁盛カレンダー」は、オタフクソースが創業80周年の記念事業として平成14年版から制作を始めた。平成21年版、27~29年版は公募川柳を掲載した「お好み焼川柳カレンダー」に変更されたが、カレンダーは当時から「ずっと続いてほしい」という思いで制作されており、令和4年版で21作目という〝ロングセラー〟となった。

1作目の表紙は、住宅街の一角にあるお好み焼き店が描かれ、その店名も「お好み焼 幸」。舞台は関西だが、漫画「じゃりン子チエ」をほうふつさせるような懐かしさが漂う。

東日本大震災の翌年となる平成24年3月11~17日のページには「ふたりに春がきたね、お好み焼。」とつづられていた(オタフクソース提供)
東日本大震災の翌年となる平成24年3月11~17日のページには「ふたりに春がきたね、お好み焼。」とつづられていた(オタフクソース提供)

日常の一幕を大切に

カレンダーの一文は時代背景もとらえつつ、「世相を強調しすぎないように」もしてきたという。「お好み焼きはみんなを〝丸く〟する。つながりを大事にしたいという思いも込め、日常の小さな幸せを忘れずにいたい、という感覚でしょうか」とオタフクソースマーケティング部販促課の柴田尚子さん。

東日本大震災(平成23年)が発生した翌年の平成24年版カレンダー。3月11日の週をめくると、ホットプレート上に、マヨネーズでハートが描かれたお好み焼きのイラスト。そのお好み焼きから上がる湯気を道に見立て、ヘラを手にした男女2人が後ろ姿で歩いていく風景が描かれていた。

添えられた言葉は「ふたりに 春がきたね、お好み焼。」。素朴な日常の一文にすぎないが、見る人それぞれに、それぞれの思いがめぐる。

お好み焼きを〝凝縮〟

監修は1作目からコピーライター兼クリエーティブディレクターの若山憲二さんが担当してきた。「キッスは目にして!」「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」などの名コピーを生み出したことでも知られている。

「東京お好み焼き大好き会」なる会の事務局長でもある若山さん。「子供の頃から食べていたし、かしこまらないで、日常的におやつのように食べられるところがいい」と魅力を語る。

いま、もっとも気に入っている一文は、令和4年版の表紙の言葉。毎回新しい表現が求められるカレンダー。「来年はまた新しい表現が一番好きになって、それを表紙にする」という。

「営業さんの代わりに配ることも。お店はコロナで苦労されているので、もっともっと励ますという意味もある」との思いも込めた令和4年版カレンダー。

イラストも言葉も毎年少しずつ変わるが「飽きないで食べていられるのがお好み焼き。食べるたびにおいしいなあと感じるように、このカレンダーもそうであってほしい。令和4年版もいいのができた」という自信作となった。

カレンダーはお好み焼きとともにある日常のワンシーンを描いてきた
カレンダーはお好み焼きとともにある日常のワンシーンを描いてきた

毎年楽しみに

令和4年版は約5千部発行。お好み焼き店向けノベルティーのため、一般向けに積極的な販売はしていないが、店先でファンになった人は多く、一部はネットなどでも販売。「毎年購入を楽しみにされ、販売時期を聞きにこられる男性の方もいる。購入者は県内の方が多いですね」と清水さんは話す。

21作目ともなると、毎年待ちわびているお好み焼き店も多いそう。令和4年で創業57年になる広島市南区のお好み焼き店「KAJISAN」の梶山敏子さん(80)は「持ってきてくれたら、やっぱりうれしいよ。使い終わった後はカレンダーの台紙に電話番号を書いたりして活用してるしね」とにっこり。

梶山さんは被爆者で、母を原爆で亡くした。苦労も多かったが、夫婦で子育てしながら店に立ち続けてきた。7畳ほどの広さで8人も座れば満員。いつも常連でにぎわっている。常連さんとのたわいのない会話に加わらせてもらった。それだけで、なんだか楽しくて温かい気持ち。カレンダーに描かれている日常が、店内にはあふれていた。(嶋田知加子)