常に強さ見据え「道」進む 20歳迎える藤井聡太四冠

「道」と揮毫(きごう)した色紙を手にする藤井聡太四冠=東京都渋谷区(桐原正道撮影)
「道」と揮毫(きごう)した色紙を手にする藤井聡太四冠=東京都渋谷区(桐原正道撮影)

昨年、将棋の第34期竜王戦七番勝負を制し、史上最年少4冠に輝いた藤井聡太四冠(19)=棋聖・竜王・王位・叡王=は新年を迎えるにあたり、「非常に充実した1年だった」と振り返った。今月には早くも5つ目のタイトルを懸け、第71期王将戦七番勝負に挑む。史上4人目の5冠について、「意識はしない。より実力を高められるように頑張りたい」と力強く語った。7月に20歳を迎える若き王者が今年も棋界に歴史を刻む。

藤井四冠は昨夏、第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負、第62期王位戦七番勝負で、それぞれ初防衛を果たし、2冠を堅持した。王位戦と並行して指された第6期叡王戦五番勝負、10月からの竜王戦でもそれぞれ初奪取に成功。羽生善治九段(51)を抜いて、史上最年少で4冠に輝いた。

藤井四冠は「叡王と竜王の2つのタイトルを獲得でき、実力以上の結果を出せた1年だった」と昨年を振り返った。さらに、「棋聖戦、王位戦の防衛も含め、多くのタイトル戦を経験でき、充実した1年でもあった」と総括した。

最も印象に残るタイトル戦としてはフルセットまでもつれた、当時叡王の豊島将之九段(31)との叡王戦を挙げた。豊島九段とは王位戦、竜王戦でも激突しており、「こちらが気づいていない構想を示され、リードされることが多かった。課題を突き付けられた」と、同郷の先輩棋士との接戦ぶりを述懐した。

昨年最後のタイトル戦となった竜王戦は4連勝の圧勝で最年少4冠を達成。「過去に4冠や竜王になった方々は偉大な棋士ばかり。光栄に思っている」と笑顔を見せた。しかし、今月からの王将戦で挑む最年少5冠については、「意識することではない。良い内容の将棋に」とこれまでと同様、平常心で臨む姿勢を強調した。

深まる序盤の理解度

藤井四冠は今年度、ここまで45勝10敗(勝率8割1分8厘)。記録4部門(局数・勝ち数・勝率・連勝)で1位を独占し、2度目の記録4冠も視野に入る。

平成28年12月のデビュー戦から約5年がたつ。基本的にはデビュー以来、特に大きく変わったところはないというが、「序盤の理解が深まってきている。タイトル戦にも出られるようになり、数多く対局させていただくことがモチベーションにもつながっている」。

将棋の勉強は基本的にAI(人工知能)による将棋ソフトを使って取り組む。自らの公式戦を振り返ったり、ソフトと対局したりする。対局でミスをすることもあるが、藤井四冠は「ミスに気を取られてはいけないので、目の前の局面に集中することを意識している」と話す。対局後はミスをした場面を振り返り、ソフトの読み筋と自分の読み筋・判断を合わせてミスの要因を分析、次につなげることが重要という。

「常に試行錯誤」

将棋の研究でなかなか成果が出ないときは深刻に考えず、いったん違うことをして気持ちを切り替える。マイペースで続けることを心掛け、「将棋は負けてうまくいかないことがある。それをひとまず受け入れて次につなげる、ということを将棋を通してできるようになりました」と明かす。

取材では、「道」と揮毫(きごう)した色紙を披露した。「強くなることを目標に取り組んできた。その道をこれからもぶれないように見据えて進んでいきたい」と藤井四冠。その道については、「どうすれば強くなれるのかという方法はない。常に試行錯誤しながらだが、前に進んだときの充実感はある」と表現した。

7月には20歳になる。新年の抱負について、若き四冠は「王将戦からタイトル戦が続く。しっかりコンディションを整えて良い将棋を指したい。そうした経験を生かし、より実力を高められるように頑張りたい」と誓った。

9日から王将戦、渡辺三冠と頂上決戦

藤井聡太四冠が5つ目のタイトル「王将」獲得を懸け、渡辺明王将(37)=名人・棋王=に挑む第71期王将戦七番勝負は9、10の両日、静岡県掛川市で指される第1局で開幕する。

昨年7月の第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局で対局する藤井聡太四冠(左)と渡辺明三冠‖静岡県沼津市の沼津御用邸(前川純一郎撮影 リモートカメラ)
昨年7月の第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局で対局する藤井聡太四冠(左)と渡辺明三冠‖静岡県沼津市の沼津御用邸(前川純一郎撮影 リモートカメラ)

「4冠対3冠」の将棋界の頂上決戦。藤井四冠が「藤井1強時代」を突き進むのか、渡辺王将が阻止するのか、年明けから早くも注目されるタイトル戦だ。

両者がタイトル戦で激突するのはヒューリック杯棋聖戦の91期、92期に続き、3度目となる。いずれも藤井四冠が制した棋聖戦は持ち時間各4時間の1日制に対し、王将戦は持ち時間各8時間の2日制。両者の2日制での対戦は初めてで、渡辺王将にとっても意地を見せたい大一番となる。

藤井四冠は「これまでの対戦で渡辺王将の戦略的な強さを実感している。8時間の持ち時間を有効に使い、対抗できるようにしたい」と意気込みを語った。