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紅白、司会の組分け廃止 男女対戦形式は維持、今後はどうなる

今年の大みそかで第72回を迎える「NHK紅白歌合戦」は、ダイバーシティ(多様性)やジェンダーフリー(男女平等)を意識し、「Colorful~カラフル~」をテーマに掲げる。これに合わせ、進行役も前回までのように紅組司会、白組司会、総合司会と役割を明示して分けることなく、「司会」に呼称を統一した。一方で、今回も出場歌手は基本的に男女別で紅白に分けられており、名物として続けられてきた「男女の対戦」という形式は継続される。

カラフル

紅白のテーマには、その年の雰囲気や出来事が反映されてきた。阪神大震災や地下鉄サリン事件などが起きた平成7年は、暗い話題を吹き飛ばそうと「新たなる出発」。東日本大震災が発生した23年は「あしたを歌おう。」、コロナ禍で史上初の無観客開催となった昨年は「今こそ歌おう みんなでエール」となった。

今年の「カラフル」には、コロナ禍で暗い日々が続いたことから「世の中を少しでも彩りたい」という思いと、「多様な価値観を認め合おう」というメッセージが込められているという。

先月行われた出場歌手の発表記者会見後、制作統括の一坊寺(いちぼうじ)剛チーフプロデューサー(CP)は「(2色だけの)紅白でカラフル? と、疑問を抱かれてる方もいるはずだが、さまざまな色が存在する素晴らしさ、多様性、それらが集まって一つのものを作り上げるのが〝紅白歌合戦〟ではないか」と趣旨を語った。

かつては「敵」

司会の組分けの廃止も「垣根を越えて、一つのエンターテインメントを作るべきだ」と考えた結果だ。

かつては司会が率先して「白組には負けないぞ」「紅組には勝つぞ」などと、番組を盛り上げていた。例えば、視聴率80%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した昭和47年の第23回では、紅組司会の歌手、佐良(さがら)直美と白組司会の宮田輝アナウンサーが番組開始すぐに「正々堂々、〝敵〟をノックアウトする」と選手宣誓。白組を男性軍、紅組を女性軍とする呼び方も一般的だった。

しかし、平成11年に男女共同参画社会基本法が施行され、徐々に多様性の意識が進んだことを受け、「男女の戦いをあおるというのはちょっと違う。司会は協力して盛り上げ、応援する存在であってほしい」(一坊寺CP)と考え直したという。

そもそも、テレビ離れとともに、紅白の組分けの理由を知らない若者も増えているようだ。昨年、「香水」がヒットして出場が決まり、注目を集めたシンガー・ソングライターの瑛人(えいと)(24)は男女別の組分けであることを発表記者会見の直前まで知らなかったと明かし、中高年の視聴者らを驚かせた。

ブランド維持

今年も出場歌手については、従来の枠組み通り、男女別のままだ。正籬(まさがき)聡放送総局長は先月の定例会見で「歌合戦というスタイルが定着していて、見やすいという言葉もいただく」と説明した。一坊寺CPは「今までのやり方にシンパシーを覚えていらっしゃる方もいる。そこまで変えてしまうと、視聴者へやや不親切なことになるとの危惧もあった」と振り返る。「ただ、紅白は進化の過程にあり、来年再来年はまた違った形になっているかもしれない」

同志社女子大の影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)は「紅白歌合戦はテレビエンタメの最高峰。対戦形式は番組を盛り上げやすく、NHKとしてはブランドを崩すわけにはいかないだろう。ジェンダーフリーの観点から男女別対抗には意見もあるが、これまでのスタイルから全部変えるのは無理がある」とした上で、今回の変化について「改革の一歩を踏み出したことは確か。テレビ業界全体に新しい風が吹いたと思う」と分析している。