勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(382)

再編完了 ソフトバンクに託された思い

新ユニホームをお披露目する(右から)ソフトバンクの王監督と新垣、川崎、孫正義オーナー=2005年1月30日
新ユニホームをお披露目する(右から)ソフトバンクの王監督と新垣、川崎、孫正義オーナー=2005年1月30日

■勇者の物語(381)

「楽天」の新規参入で平成17年シーズンは「セ6パ6」の12球団で開催されることになった。だが、球界再編は終わりではなかった。

経営危機に陥っていたダイエーが産業再生機構入りを決め、孫正義社長率いる「ソフトバンク」への球団売却に踏み切ったのである。昭和63年9月、南海から「ホークス」を買収して16年目に訪れた〝悲劇〟。中内正オーナーの胸中は「無念」の思いでいっぱいだったろう。

球団2年目の平成2年から3年間、田淵ダイエーを担当した筆者は、3歳年下の「中内ジュニア」(当時はオーナー代行)と妙に馬が合った。ダイエーグループの御曹司(次男)というのに少しも偉ぶらず、一記者の意見でも真正面から聞いてくれた。博多の街を夜遅くまで飲み歩いたこともあった。ある日、酔った勢いでこんな質問をした。

「ホークスの経営なんて、親父さん(父・㓛)にとってみれば、社会ステータスを上げる〝遊び〟なんだろう」

「親父にとってはね」とジュニアは反論しなかった。そしてこう続けた。

「でも、オレにとっては遊びじゃない。大事な会社。儲け、利益を出さなければいけない仕事なんだ」

「儲ける? 球団経営でそれは難しいだろう。何で儲けると言うんだ」

「人だよ。ダイエー球団で優秀な指導者や選手を育てて、大リーグに〝輸出〟するんだ。ダイエーブランドの人材をね」。中内は夢を語った。

「ボクはホークスを宝塚歌劇団のようにしたい。トップスターをドンドン輩出し〝宝塚出身〟の女優がいっぱい。でも、劇団は困らない。次々に新しいスターが誕生する。ホークスもそんなチームにしたい」

ジュニアの〝夢〟はソフトバンクに引き継がれた。12月24日、臨時オーナー会議で「譲渡」を承認された孫社長は、大好きな坂本竜馬の名前を出してこう宣言した。

「大きな志を持って、知識と情報を使って新時代を呼び込んだ坂本竜馬のように、われわれも球界に新時代を呼び込みたい」

竜馬が作った「海援隊」の旗をモチーフに企業カラーの「黄色と白」。ソフトバンクホークスのロゴマークに生かされている。(敬称略)