子供の「免疫負債」波紋 感染症、適切な年齢でかからず コロナ対策の産物

2年にわたる新型コロナウイルス対策が例年流行する他の感染症を広く抑制してきた半面で、乳幼児期に有益な免疫を獲得できない〝免疫負債〟を抱えた子供の増加につながったとの懸念が強まっている。コロナの感染状況が落ち着いた今冬は、夏風邪の「手足口病」と「ヘルパンギーナ」の患者報告が季節外れの拡大を見せた。昨年激減した「RSウイルス」も大流行が起きており、免疫負債の波紋が広がりつつある。

東京都港区にある小児科医院「クリニックばんびぃに」では10~11月、口腔(こうくう)内の発疹などの症状を訴える子供が急増。1週間に10~15人ほどが手足口病かヘルパンギーナに診断されるという例年にはみられない状況に直面した。

時田章史院長は「コロナのデルタ株流行がひと段落した後から患者が増え始めた印象だ」と分析。今月に入り、患者数はやや減ってきたが、併設された病児保育室では定員6人の半分近くを手足口病の子供たちが占めることもあるという。

主に夏場に流行する手足口病やヘルパンギーナは昨年、コロナ対策などを背景に全国的に患者が大きく増えることはなかった。ところが、今年は8月中旬ごろから報告数が徐々に上昇。国立感染症研究所によると、今月13~19日の1医療機関当たりの患者数は手足口病1人、ヘルパンギーナ0・27人となり、過去5年間の同時期では最も多い水準となった。

時田氏は「コロナ禍における厳密な感染対策はさまざまなウイルスを遠ざける一方、子供たちが本来の年齢に免疫を獲得できない状況をもたらした」と指摘。コロナの流行抑制で衛生対策の緩みも生じる中、「免疫の貯金が十分でない子供たちの間で、想定外の感染症が広がりかねない状況が生まれている」とみる。

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こうした〝免疫負債〟の影響とみられる感染流行はすでに表面化している。

子供を中心に例年秋ごろに流行するRSウイルスは昨年1年間ほぼ確認されなかったが、今年は春先からじわじわと増加。7月中旬には1医療機関当たりの患者報告が5・99人とピークを迎え、コロナ禍前の一昨年の最大値(3・45人)を上回る大流行となった。

RSウイルスは重症化すれば、入院治療を受ける必要がある。今年の感染拡大時には一部医療機関で小児科病床が次々と埋まる事態が起き、コロナの流行第5波とも重なって、医療逼迫(ひっぱく)のリスクが浮き彫りとなった。