栃木・茂木町「幻の長倉線ツアー」 未成線を観光資源に

普段は立ち入り禁止の大峯山トンネルにヘルメットを着用して入る参加者
普段は立ち入り禁止の大峯山トンネルにヘルメットを着用して入る参加者

多くの地方自治体が頭を悩ませている地域経済活性化。栃木県茂木町で、途中で工事が打ち切られた路線「未成線」と呼ばれる鉄道遺構を徒歩で訪ねる「幻の長倉線ツアー」が、新たな観光資源として注目されている。秋期ツアー最終日の12月11日、見学する機会を得た。

ツアーは、茂木駅(茂木町)、下野中川駅それぞれを出発点に全長約6キロを3時間半で踏破する健脚コース、途中の大峯山トンネル(全長180メートル)が終点で約2時間の入門コースを設定。今年4~6月には新緑を楽しむ土日の春期ツアー、10~12月は紅葉に合わせ秋期ツアーを敢行。各200人超の鉄道ファンや里山の景色を楽しむハイカーが参加した。

この日に見学した入門コースでは午前9時前、宇都宮や栃木県真岡市、同県栃木市などから女性12人、男性6人が茂木駅に集合した。ガイドは春ツアーに参加し鉄道好きが高じてボランティアガイドを志願した宇都宮市の鈴木浩也さんが務め、茂木町の若手職員がサポートした。

参加者は密を避けるためのイヤホンガイドで鈴木さんの解説を聞きながら路盤跡、切通、コンクリート橋など各所に残る鉄道遺構、里山の景色を楽しんだ。終点の大峯山トンネルではヘルメットをかぶり、懐中電灯を手に中へ。当時の写真類など長倉線の歴史を紹介する動画を観賞した。

仕掛け人は、茂木町内に一軒もないというラーメン専門店を会員制交流サイト(SNS)を活用して誘致し、話題をさらった〝ラーメン課長〟こと同町商業観光課の滝田隆課長。ツアーは滝田課長が事務局長を務める同町観光協会が主催する。

長倉線は茂木駅と茨城県常陸大宮市長倉を結ぶ計画だった国鉄線。昭和12年に着工し、約6キロ北東の「下野中川停車場」までの路盤は完成したが、戦争の影響で工事は中断し、放棄された。

滝田課長は、信越本線新線横川(群馬県)-軽井沢(長野県)間の鉄道遺産群を巡る「廃線ウォーク」に着目。「以前から長倉線の存在は知っていたが、誰も興味を示さなかった。(廃線ではなく)1回も走っていない未成線は全国でも珍しく、ロマンをかき立てられた」と話す。

決断からの動きが素早かった。資金調達に加え、昨年10月、観光庁の実証事業に採択されると、当時を知る町民を尋ね歩いた。貴重な資料や写真類を発掘。約2カ月の短期間で、ツアー参加者に配布する全20ページの特製ガイドブック(非売品)を完成させた。

他には見られないツアー内容に参加者からの評判も上々だ。妻と入門コースに参加した宇都宮市の大塚烈さん(59)は「未成線の魅力を分かりやすくガイドしてくれて面白かった。来年も参加したい」と笑顔で茂木駅に戻っていった。

滝田課長に今後の展開を聞くと、道の駅もてぎ(茂木町)前にできたホテルとタイアップし、周辺にある鎌倉山(216メートル)の雲海を楽しむ1泊ツアーやSLもおか号を組み合わせた日帰りプランを用意するという。

「ツインリンクもてぎや道の駅だけじゃない観光資源をもっと掘り起こし、点から線につなげたい」。観光誘客を図り、経済活性化にかける滝田課長の〝茂木愛〟。次の一手に期待したい。(石川忠彦)

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