放火疑いの男が死亡 大阪・北新地ビル放火

火災があった現場ビル(左)=30日午後5時34分、大阪市北区
火災があった現場ビル(左)=30日午後5時34分、大阪市北区

大阪市北区曽根崎新地のビル4階のクリニックで25人が死亡した放火殺人事件で、現住建造物等放火と殺人の疑いが持たれていた谷本盛雄容疑者(61)が入院先の病院で死亡したことが30日、捜査関係者への取材で分かった。谷本容疑者は現場から心肺停止状態で搬送され、蘇生(そせい)したが、一酸化炭素(CO)中毒や顔などに重度のやけどを負い、意識不明の重篤な状態が続いていた。

大阪府警天満署捜査本部は現場クリニックの防犯カメラ映像などから、患者だった谷本容疑者の犯行と断定しており、今後、容疑者死亡のまま殺人容疑などで書類送検する方針。

関係者によると、谷本容疑者は心肺停止の間に酸素が脳に供給されず、そのために損傷を受ける低酸素脳症と診断されていた。症状が悪化し、呼吸や心拍をつかさどる脳幹に影響が出れば、再び心肺停止の危険があると指摘されていた。

事件は12月17日午前10時20分ごろ発生。ガソリンが使われたとみられる火災により、クリニック約25平方メートルを焼損した。現場から谷本容疑者を含む27人が心肺停止状態で搬送され、これまでにクリニックの院長や患者ら計25人が死亡。いずれもCO中毒だった。

捜査本部は、クリニックや現場周辺の複数の防犯カメラ映像を解析し、谷本容疑者を特定。ガソリン入りの紙袋を持参し、ライターで火をつけたとみている。

府警は事件2日後の19日に、「被害者やご遺族が容疑者の特定を望んでいる」として、逮捕状請求前の段階で谷本容疑者の氏名公表に踏み切った。

谷本容疑者は蘇生後も意識を回復せず、事情聴取ができなかった。捜査本部は谷本容疑者の事件前の行動や当日の足取り、クリニックとの関係性などを詳しく調べ、関与について裏付けを進める見通し。

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