議員の融資口利き、コロナ禍で違法ビジネス化

議員辞職を表明し謝罪する公明党の遠山清彦衆議院議員(春名中撮影)
議員辞職を表明し謝罪する公明党の遠山清彦衆議院議員(春名中撮影)

貸金業法違反罪で東京地検特捜部に在宅起訴された元財務副大臣で公明党の元衆院議員、遠山清彦被告(52)は、日本政策金融公庫への「口利き」が罪に問われる形となった。議員らによる働きかけや要望は与野党問わず古くから行われてきたが、遠山被告らは新型コロナウイルス感染拡大による経済不安を背景に大量の案件をさばき、その対価に謝礼を受け取るなどし、口利きが「違法なビジネス」と化していった。東京地検特捜部はこうした悪質性も考慮して立件に踏み切った。(荒船清太、吉原実、石原颯)

公庫には、遠山被告が仲介した融資だけをまとめた「遠山ファイル」が独立のフォルダに束ねられ、保管されていたという。

今年5月に社長らが逮捕された太陽光発電関連会社「テクノシステム」をめぐる詐欺事件の捜査で、遠山被告が公庫の担当者を同社に紹介していたことが発覚。同様の口利きが多数行われていたことが判明したのが端緒だった。

ただ、口利きが直ちに違法とされるわけではない。永田町関係者は「口利きなら昔からある。自民党は国会議員が主だが、公明党は国会議員だけでなく、地方議員も熱心にやっていた」と明かす。

特捜部が問題視したのは、口利きの規模の大きさと、対価を受け取っていたことだ。遠山被告の口利きは、単なる仲介ではなく、登録が必要な「仲介業」にあたると判断した。

関係者によると、遠山被告は今年2月の議員辞職後も、金融コンサルタントと名乗り、元秘書らを通じて融資仲介を続けていた。議員在職中は仲介した百数十業者のうち謝礼を受け取ったのは一握りだったとされるが、辞職後は融資が成立した業者から融資額の数%を受け取る契約を結んだ。相談件数は在職中から数えて約200件に上った。

議員の影響力を使った口利きを取り締まる法律にはあっせん利得処罰法があるが、同法は成立要件が厳しく、適用事例もほとんどない。特捜部は、遠山氏が財務副大臣在任中も仲介していた点をとらえ、貸金業法違反罪と並行して贈収賄罪の適用も視野に入れた。

だが、検察幹部は「政治家が政治とは関係ないところで、金もうけをしている点で前代未聞」と指摘。「政治家の犯罪としてではなく、貸金業法違反罪を適用するのに意味がある」と強調する。

不正に仲介した件数が100件以上に上ったのは、令和2年に始まった新型コロナ禍で公庫の融資規模自体が膨らんだことが背景にある。コロナ禍で政府は低利で融資する特別融資制度を創設し、窓口の一つとなった公庫には相談が殺到した。

元年度の公庫の事業者への融資件数は約29万件で融資額は約3・6兆円だったが、2年度は約94万件と約14・3兆円に跳ね上がり、業務量も増大。条件を満たしても融資がおりない案件が山積みとなり、遠山被告のもとにもコロナ陳情が舞い込むようになった。

昨年、遠山被告に融資仲介を依頼した東京都内の業者は、「なかなかおりない融資が遠山先生にお願いしたら認められ、300万円借りられた。ありがたい話だと思った」と明かす。

この業者は、公庫の担当者から「融資結果を遠山事務所に伝えていいか」と聞かれ、公庫と遠山被告のつながりの深さを実感した。遠山被告と直接やりとりすることはなかったが、仲介者からは手数料10%を要求されたという。

遠山被告にコロナ特別融資を求める業者の多くを紹介したのは、ブローカーの牧厚被告(74)=貸金業法違反罪で在宅起訴=だ。牧被告は融資額の数%を手数料として業者側から受け取っていたといい、産経新聞の取材に「遠山被告の名前を出すと、実際に申請がおりる順番が早まった」と明かした。