主張

コロナ治療薬 迅速確実に患者に届けよ

新型コロナウイルスの軽症者を対象にした初めての飲み薬が特例承認された。飲み薬の登場により外来で重症化を防げるようになれば病床逼迫(ひっぱく)を招かずに済む。致死率も下がるだろう。

市中感染が各地で確認されているオミクロン株はデルタ株ほど重症化しない可能性があり、軽症者の治療が制御のカギとなる。

迅速な検査と薬剤供給態勢の整備が不可欠である。政府は薬剤を160万人分確保することで合意しており、既に20万人分を調達した。岸田文雄首相は今週にも使えるとしている。

承認されたのは米製薬大手メルクが開発し、日本法人MSDが申請した「モルヌピラビル」だ。オミクロン株にも有効とされ、発症から5日以内の服用で入院や死亡を30%減らせる。重症化リスクのある18歳以上の患者が対象だ。

外来では医療機関が処方箋を薬局に送り、薬局が患者に薬剤を配送する。検査や配送が滞ると服用が間に合わない。供給網を整え、迅速に正確に行ってほしい。薬剤のさらなる確保も課題である。

新型コロナの飲み薬では、米製薬大手ファイザーも新薬の承認申請を準備している。日本の塩野義製薬も最終段階の臨床試験(治験)を行っている。薬剤が増えれば治療の選択肢が広がる。

新型コロナがインフルエンザのように、一般的な感染症に近づく過程にあると期待したい。

MSDもファイザーも今回、効果と副作用を確認する治験を、日本でも欧米と同時並行で行った。こうした協力は、薬剤の早期承認や確保に寄与する。

近年、日本では多くの医療機関が国際的な治験に参加するようになった。質の高い治験が可能になった証しだろう。政府は引き続き治験環境を整えてほしい。

一方で、日本の製薬会社が海外で治験を行うケースは多くない。塩野義製薬は今回、飲み薬の治験を韓国やシンガポールなどでも行う。海外で質の高い治験を実施できれば薬剤を早期に評価できる。海外の市場確保にもなり、薬剤を通した経済安全保障の点でも意義がある。製薬が海外での治験実施に尻込みせぬよう、政府が後押ししていくことも重要である。

治療薬とワクチンは、新型コロナとの戦いにおける両輪だ。ワクチンの3度目接種も急ぐべきなのは当然である。