千葉県では春に知事選、秋には衆院選と、大型選挙が相次いだ。喫緊の課題である新型コロナウイルス対策をはじめ、経済など課題が山積するなか、県政では、千葉市長を3期12年務め、立憲民主党が県レベルで応援した熊谷俊人氏(43)が、国政では自公連立政権が、それぞれ難局打開へのかじ取りを託された。2つの選挙で、本県では、自民と立民は、引き分けの構図になったといえる。
最多の140万票超
知事選は3月21日に投開票された。引退を表明した森田健作知事(当時)の後任として初当選した熊谷氏は4月5日に就任。知事の交代は12年ぶりだ。
選挙戦は過去最多の8人で争われたが、行政経験が豊富で立民や日本維新の会の県組織などと政策協定を結んだ熊谷氏と、弁護士で県議を10年務めた関政幸氏(自民推薦)による事実上の一騎打ちとなった。
結果は熊谷氏が史上最多の140万票以上を獲得して圧勝。100万票以上の差をつけられた自民は明らかな惨敗だった。県連会長の渡辺博道衆院議員は会長を辞し、後任に浜田靖一衆院議員が再登板した。
もっとも、自民は一枚岩ではなく、県選出の石井準一参院議員が公明党の富田茂之衆院議員(当時)とともに熊谷氏を支持。県議会で過半数を占める県議の間でも元同僚の関氏を支える態度には温度差があった。
自民は昨秋、習志野市出身の前スポーツ庁長官、鈴木大地氏を擁立しようとして失敗。候補者調整を経て、関氏が出馬表明をしたのは昨年11月末で知名度不足は否めなかった。対する熊谷氏は早くから知事選への意欲を示し、県内の首長や団体などと関係を構築。知事選と同日に投開票された千葉市長選でも自らの後継である神谷俊一氏が初当選するなど、熊谷氏側の「完勝」だった。
12議席対5議席
10月31日に投開票が行われた衆院選では、自公連立政権が信任を得た。特に県内13選挙区では自民が9選挙区(改選前12選挙区)を、立民が4選挙区(同1選挙区)を獲得。「政権選択選挙」を掲げた立民は選挙区で追い上げたが比例で伸び悩み、選挙区と比例を合わせると自民12議席に対し立民5議席で、選挙前よりも差は広がった。
新型コロナの変異株「デルタ株」が猛威を振るった夏ごろまでは与党に猛烈な逆風が吹き、立民関係者の言葉にも勢いがあった。ところが、9月3日に当時の首相、菅義偉氏が自民総裁選への不出馬を表明すると事態は一変した。自民関係者は「駅頭で活動していたら風向きが明らかに変わった」と振り返る。ワクチン接種の進展などによる感染者数の急減も自民に追い風となった。一方で、野党は立民と共産党の「共闘」に期待をつないだ。しかし、連合千葉をはじめとした立民の支持基盤からは疑問の声が上がり、選挙活動に影響を与えたとされる。
岸田文雄政権で迎えた衆院選は、解散から投開票日まで17日間という短期決戦で、各党は大物議員らを応援弁士として本県に投入した。「自民vs立民」が大激戦となった選挙区も。10区では、自民有力者の林幹雄氏と立民の谷田川元氏の戦いが注目された。選挙区は林氏が制したが、支援した多古町長(当時)が公職選挙法違反容疑で逮捕される異例の事態となった。
「自民」支持か、それとも「立民」か-。来夏には参院選が行われ、県内有権者の選択が三度(みたび)注目される。 (小野晋史)