年の瀬記者ノート

居場所ない少年らがたむろする「トー横」 大人は子供を守れるか

新宿・歌舞伎町の「トー横」で行われた一斉摘発。この日は翌日にかけ17人が補導された=4日、新宿区歌舞伎町(根本和哉撮影)
新宿・歌舞伎町の「トー横」で行われた一斉摘発。この日は翌日にかけ17人が補導された=4日、新宿区歌舞伎町(根本和哉撮影)

日本一の歓楽街、新宿・歌舞伎町にある「トー横」。居場所のない少年らが集まるこの界隈で今年、暴行、買春、傷害致死などの事件が多発した。警視庁はこの事態に危機感を抱いて警戒を強めているが、「ただたむろするだけ」の少年らに対し、できることは限られているのが現状だ。トー横をめぐる問題は、少年らを守るはずの大人が、その役割を果たせていないことを浮き彫りにしている。

不安定さが表出

「いじめられてるから、最近学校にあんまり行けてないんだ」

12月の寒空の夜、10代の女子高生は冷たいアスファルトに腰を下ろしてつぶやいた。周りで、酒やたばこを手にした同年代の少年や少女が、熱心に女子高生の話を聞いている。

「俺が一緒に行けば、そいつらも逃げるんじゃねえか」。一人の少年が冗談めかして言うと、辺りは笑いに包まれた。

少年らが集まるのは、新宿区歌舞伎町の複合ビル、新宿東宝ビルの横で、通称トー横。家庭や学校に居場所のない少年らによって数年前に形成され、最近は地方にもその存在が広まっている。少年らは談笑したり、ダンスを踊って動画をSNS(会員制交流サイト)で投稿したりするほか、集団で飲酒や市販薬の過剰摂取なども行う。

「家や学校には居場所がない」「誰かと一緒にいたい」…。少年らが口をそろえて訴えるのは孤独感だ。

相次いだ事件

こうした心の闇が今年に入り、事件という形で表面化した。6月には10代の少年がホームレスの男性を暴行してその後書類送検され、10月には20代の男が10代の少女と性交、その様子を撮影したとして逮捕された。そして11月には傷害致死事件が発生。とうとう人の命が失われる事態となった。

少年らが悪質な犯罪に巻き込まれる状況を「見過ごすことはできない」(警視庁幹部)とし、警視庁は今夏以降取り締まりを強化。9月と12月には私服警官を投入して一斉摘発を行い、深夜にたむろしていた少年らを補導した。

しかし、トー横を取り巻く問題は補導のみで解決するほど単純ではない。補導されても素直に素性を話さない少年や少女も多く、補導後に一時的に人が減っても、居場所のない少年らはしばらくすると戻ってきてしまうのだという。警視庁幹部は「辺り一帯を閉鎖しても、違う場所に移るだけだろう。根本的には解決しない」と頭を悩ませる。

子供を守れるか

警視庁幹部は「補導した子の親の中には、もう諦めているからと迎えに来ない人もいる」と嘆く。10代に必要なのは、周囲の大人の支えのはずだ。それなのに、最も身近な大人が諦めていては、トー横の少年らは心の傷を癒やすことはできないだろう。

未熟な少年らに付け込む大人が最も悪いことは言うまでもない。少年らに全く責任がないわけでもない。ただ、大人たちは自分のことに精いっぱいで、この国の未来を担う少年らの成長を見守ることができていないのではないか。酔客が行き交う街の真ん中で、寒空の中、行く当てもなく身を寄せる小さな体を見て、そう感じざるを得なかった。(根本和哉)