布製マスク「廃棄もったいない」配布希望1万件超に

倉庫に保管される約8千万枚の布製マスク=28日午後、東京近郊(桐山弘太撮影)
倉庫に保管される約8千万枚の布製マスク=28日午後、東京近郊(桐山弘太撮影)

政府が新型コロナウイルス対策で調達し、アベノマスクと揶揄(やゆ)される布製マスクの在庫分を希望者に配布した後に廃棄する意向を示したことで、「もったいない」などと再活用を模索する動きが広がっている。マスクの申し込みはこれまでに1万件以上。配布には、批判を浴びた高額な保管コストを解消する狙いがあるが、希望者が増えるほど国負担の配送料がかさむジレンマも抱えている。(本江希望)

東京近郊にある巨大倉庫。約8千万枚の布製マスクが約10万個の段ボール箱に分けられ、約5メートルの高さに積み上げられている。箱に記されたメーカーや納入業者は10社以上に上る。保管費は膨大で、昨年8月~今年3月で約6億円に膨らんでいたことが明らかになった。

マスクの処分方針は、岸田文雄首相が今月21日の記者会見で表明。厚生労働省が来年1月14日まで、配布を希望する自治体や個人、団体からの申し込みを受け付けている。平型と立体型の2種類で、配布は原則100枚単位とし、配送料は国が負担する。転売目的での利用はできない。

28日までに1万件以上の申し込みがあり、担当者は「予想していたよりもかなり多い」と説明。電話の相談窓口もつながりにくい状況が続いているという。

自治体向けには災害備蓄用や希望住民への配布などが想定されるが、自治体側の反応はさまざまだ。2万5千枚を申し込んだ鹿児島県南さつま市の担当者は「廃棄するのであれば有効活用したいという市長の思いがあり、申し出た。イベントの開催時などに希望者に配布したい」と話す。

一方、群馬県太田市の清水聖義市長はツイッターで布マスクがウイルス対策に適さないことに触れ、「住民に使わせるなんてできない」と批判。市の担当者は「市として受け入れる予定はないが、希望する市民に対しての案内は行っていきたい」としている。

また、ツイッター上では「廃棄はもったいない」との投稿が相次ぎ、再活用の道を探る動きも目立つ。

「持続可能な開発目標」(SDGs)の推進事業を手がける「ネクストエージ」(大阪市)は、靴磨きや名刺入れなど約100通りの活用法を紹介しながら、さらにアイデアを募集している。神戸市の歯科医院からはマスクを分解し、ガーゼとして使いたいとの声が寄せられたという。

ネクストエージはマスクの配布も望んでいるが、国のコスト削減のため着払いでの配送を提案し、賛同企業を募っている。協力する医療機器製造販売「NMT Japan」(横浜市)の土屋恵美代表は「低所得者でマスクを買えない人はいる。必要な人に届け、活用するアイデアを考えたい」と話す。

国には自治体などに配布した上で余剰分を、マスク以外の用途などで使う希望者に売却する考えもある。

経済ジャーナリストの荻原博子さんは「早い段階で売却や廃棄などの対応をせずに放置し、保管に6億円を費やしたのは政府の責任逃れの結果だ。少しでも売却を増やす方策を考え、税金の無駄遣いを減らすように努力すべきだ」と強調した。