政府は28日、東京電力福島第1原発の処理水の処分に関する関係閣僚会議を開き、放出後を見据えた具体的な行動計画を決定した。計画では、今後1年間で、地域や業種の実情に応じた風評被害に伴う賠償基準の策定を目指す。また、令和3年度補正予算に300億円を計上した風評被害対策の基金の執行体制を年度内に整えるほか、国際原子力機関(IAEA)による安全性評価を受けることなどを盛り込んだ。
行動計画で東電による賠償の基準策定に向け、漁業、水産加工・流通業、農業、商工・観光業など業種別の賠償方針を具体化させる。その上で、政府と東電は、算定する際の基準年の設定や新型コロナなど処理水以外の要因の扱いをどうするかなどを調整する。
処理水の海洋放出をめぐっては、中国や韓国が懸念を表明しており、国際的な信頼性や透明性の向上を図るためIAEAと緊密に連携する。計画では、IAEAが福島第1原発に調査団を派遣し、4年中に安全性評価の中間報告書をまとめ、処理水の放出前後にわたり中長期的に関わることも盛り込んだ。
また、国際社会の理解を得るため、4年1月以降、韓国や台湾などの消費者を対象に、海外での風評に関するインターネット調査を開始し、結果を踏まえて必要な情報発信を行う計画。
各種取り組みが始まった後も、状況を確認しながら、随時、追加や見直しを行う方針。
政府は今年4月、5年春ごろから処理水の海洋放出を始める方針を決定。関係閣僚会議を新設し、傘下に作業部会も設け、風評影響を受ける恐れのある関係者らの意見聴取を行い、計画策定に向け、課題の洗い出しなどを進めてきた。