<独自>医薬治験完了前に承認 緊急時での発動想定

国会議事堂=東京都千代田区
国会議事堂=東京都千代田区

緊急時に医薬品を迅速に承認するため、政府が創設を目指す「緊急承認制度」の全容が27日、判明した。臨床試験(治験)の最終結果が判明する前でも有効性が推定できれば承認を可能とする。新型コロナウイルス感染症のワクチンの実用化が遅れたことへの反省を踏まえた。感染拡大時に加え原子力事故や放射能汚染、バイオテロなどの緊急時での発動を想定している。来年の通常国会に医薬品医療機器法(薬機法)の改正案を提出する。

現行の薬事承認制度は平時を前提にしており、治験を実施し、有効性と安全性を確認する作業を行うため、承認までに一定の期間が必要となる。

海外の薬事当局が認めた医薬品などについては、審査を簡略化し早期に承認する「特例承認制度」があるが、日本人への有効性や安全性を確認するため、国内で治験を行わなければならないという課題があった。

このため、米ファイザーや米モデルナ、英アストラゼネカの新型コロナワクチンはいずれも特例承認だが、欧米と比較して実用化までに2~5カ月遅れた。最近では、今月24日に米メルクが開発した新型コロナの飲み薬「モルヌピラビル」が特例承認された。

新たに導入する緊急承認制度は、医薬品などを承認する場合に確認する安全性と有効性のうち、安全性については従来の薬事承認と同じ水準での「確認」を必要としながらも、有効性に関しては「確認」ではなく「推定」の段階で承認を可能とする。緊急時で治験を完了する余裕がない場合は、完了していなくても、治験の成績に関する資料を基に有効性が推定できれば承認する方針だ。

同制度の対象は、幅広い状況に対応できるようにするため、ワクチンや治療薬にとどまらず、医療薬全般、医療機器、再生医療製品などを含める。

承認の期限は2年程度とする見通し。必要に応じて延長を可能にする方向だ。承認後、一定の期間までに有効性の確認を求め、確認できない場合は承認を取り消すことも可能にする。健康被害が発生した場合は既存の救済制度の対象とする。

特例承認制度は「海外向け」という制度の性格から、国内企業が世界に先駆けて開発しても適用されることはなかった。塩野義製薬など日本の製薬会社もワクチンや治療薬の開発を進めているが、欧米に後れを取る一因ともなっている。緊急承認制度が導入されれば、国内産が欧米並みに迅速に承認されることが予想される。