老舗料亭「瓢亭」主人が指南「だし」の取り方

年越しそばやおせち料理など、年末年始はとかく家庭で「だし」を使う機会が多い。丁寧に取っただしで料理すると、ひと味もふた味も違うおいしさが生まれる。お正月料理をテーマに開催された料理講習会で、老舗料亭のだしの取り方を教わった。(榊聡美)

マグロ節のうまみ

今月中旬、キッコーマンの「KCC食文化と料理の講習会」がオンラインで開かれた。講師は、400年以上の歴史を持つ京料理の老舗「瓢亭(ひょうてい)」(京都市左京区)の15代目当主、高橋義弘さん(47)。最初に披露されたのは、雑味なく、うまみだけを抽出するこだわりの一番だしの取り方だ。

料理講習会でだしの取り方を指南する京料理の老舗「瓢亭」の15代目当主、高橋義弘さん
料理講習会でだしの取り方を指南する京料理の老舗「瓢亭」の15代目当主、高橋義弘さん

和風だしの材料といえば、カツオ節が一般的だが、使われたのはマグロ節。「マグロ節は酸味、渋味が少なく、上品でまろやかな味わいのだしが取れます。かび付けをしたものとしていないものと、半分ずつブレンドして使います」と、高橋さんは説明した。

昆布は2、3年寝かせた北海道の利尻昆布を使用。熟成すると雑味が抜けてうまみが増し、さらに香りも風味もよくなるとか。

低めの温度でじっくりと昆布でだしを取った後、マグロ節を投入。ここからは雑味を出さず、汁が濁らないようにするのがコツだ。ぐらぐらと煮立たせたり、かき混ぜたりせず、あくが出てきたら丁寧に取る。火を止めてそのまま20分おいて、うまみをしっかりと抽出する。布巾でこすときも絞らず、落ちるのを待つ。こうして黄金色の澄み切っただしが出来上がった。

「一番だしはお吸い物やおひたしが基本。お正月には白みそ雑煮や鴨雑煮も作ります」

うまみがまだ残っているだしがらは「もったいないので」、一番だしの7割程度の水で煮出して、二番だしを取る。味、香りは薄めだが、おひたしの下味やみそ汁など、用途は広い。

煮しめをおいしく

講習では、さまざまな和食に活用できる家庭用の八方だしの作り方も。「おうちではカツオ節を使って香りも風味も強くてインパクトがあるだしを取るほうがおすすめです」

おせち料理の定番「煮しめ」には八方だしが便利
おせち料理の定番「煮しめ」には八方だしが便利

昆布でだしを取ってから、カツオ節と一緒に酒、みりんを加える。カツオ節は投入したら火を止め、しばらくおくのが定石だが、火をつけたまま軽く沸騰が続く状態で15分煮出す。そうするとアルコール分が飛び、カツオのうまみが前面に出てくる。

酒とみりんが入っているので煮物などの味付けがしやすい。お正月料理の定番、煮しめを作るのにも重宝する。高橋さんは、八方だしをベースにサトイモ、ニンジン、タケノコなど、材料を別々に煮て、それぞれに味をしっかりと含ませるレシピを紹介した。

素材の持ち味を引き出し、引き立てるだしは、「懐石の要」と高橋さんはいう。平成25年に和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたときも、だしの生み出すうまみが高く評価された。

「家庭でも、丁寧にだしを引くことで風味や味に対して敏感になります。日本人として継承していきたい大切な食文化です」