年の瀬記者ノート

無免許都議「居座り」 議会の限界も露呈

都議辞職を表明、謝罪会見に臨む木下富美子東京都議=11月22日午後、東京都庁内(春名中撮影)
都議辞職を表明、謝罪会見に臨む木下富美子東京都議=11月22日午後、東京都庁内(春名中撮影)

「本日、都議会議長に辞表を提出することを決断致しました。多くの人から『到底許されない』『規範意識が薄い』『議員の資質に欠ける』など厳しい批判を頂きました。順法精神が弛緩(しかん)していたことは猛省しており、今後は免許の再取得はせず、車の運転も致しません」

無免許運転で人身事故を起こした揚げ句、東京都議に居座り〝無免許都議〟として注目を集めた木下富美子氏(55)。11月22日夜、突然の記者会見を開き、都議の辞職を発表した。

再三にわたる辞職勧告決議を無視するなど、議会運営に混乱をもたらしていた最中(さなか)。木下氏が所属する都議会の委員会は、他の都議たちが木下氏の出席を拒んで流会となっていた。

記者会見では、同席した弁護士が一連の動きを他の都議たちによる「いじめ」と表現。木下氏自身も「十分に仕事をさせてもらえない理不尽な現実」と訴えた。だがそうした言葉を重ねる姿勢は「自分本位」に映った。

説明責任果たさず

無免許運転で人身事故を起こしたのは7月の都議選期間中。投開票を終えた後に事故は発覚したが、木下氏は議会を含め公の場には一切姿を見せず、説明責任を果たさなかった。

議会は2度にわたって辞職勧告を決議。ただ、法的拘束力はなく、木下氏は自身のホームページなどで議員活動を継続する意思を示し続けた。月額80万円超の報酬も、変わらずに支払われ続けた。

一部の都議は、議員の地位を強制的に失わせる「除名」手続きを検討した。地方自治法が懲罰の一つとして規定するもので、議員が3分の2以上出席し、うち4分の3以上の同意が要件となる。

ただ、最高裁判例では「議会の運営と全く関係のない個人的行為は懲罰の理由にならない」とされている。除名処分に積極的な若手都議に対し、都議会各会派の執行部には慎重な姿勢が目立った。

「有権者の負託を受けた議員は身分保障が手厚い。議会が手をこまねいているといわれたら、何も言い返せないのが現実だ」。ある都議はこうぼやいた。

議会へも宿題

対応に苦慮する議会を横目に、木下氏は11月、4カ月ぶりに公の場に姿を見せた。都議会議長らへの面会後、報道陣の取材に応じ「議員を続けてほしいという声もある。議員活動の中で応えていきたい」と述べ、はっきりと辞職を否定した。

これが一転したのが、11月22日の記者会見だった。突然の辞職表明の決め手となったのが、木下氏が「政治を志したきっかけ」と仰ぐ小池百合子知事の言葉だった。

「ここはいったん退いて、交通事故の解決に専念したらどうか。今回の不祥事を反省し、再出発するときには相談に乗るから」

小池氏は、木下氏が所属した「都民ファーストの会」の特別顧問でもある。かつての「部下」に引導を渡した格好となった。

木下氏をめぐる問題は、思わぬ形で幕切れを迎えた。だが、不祥事を起こした議員が職にしがみつき、報酬をもらい続けるという想定外の事態に、議会が十分に対処できたとは言い難い。同じような事態が再び起きないとはいえない。そのとき議会は、何ができるのか。今回の問題は議会にも大きな宿題を残したといえる。(大森貴弘)