大阪市内の都心部で分譲マンションの開発が進み、小学校の教室不足が深刻化している。かつて「ドーナツ化」現象で人口が流出したエリアに、職住近接を求める共働き世帯などが回帰し、児童数が急増。校舎増築によって、体育の授業が制限を受ける学校も現れた。
運動場に校舎
在阪企業の本社が軒を並べ、明治期に金融の中心としての地位を築いた大阪・北浜。オフィスビルの間に建つ市立開平(かいへい)小学校は、ドーナツ化現象に伴う児童数の減少で2校を統合し、平成2年に開校した。小規模校としてスタートしたが、近年、最高階数20階以上のタワーマンションが校区内で次々と竣工(しゅんこう)。児童数は10年前の3倍以上となる約340人に増加した。
「来年2月に工事が終わる予定で、子供たちも心待ちにしている」
こう語るのは、開平小の赤銅(せきどう)久和校長。教室不足に対応するため、運動場に6階建て校舎が建設されることになり、今秋から運動場が全面的に使えなくなった。体育の屋外授業は徒歩10分の距離の公園内にある第2グラウンドで実施。工事終了後の運動場の広さでは、運動会などの大規模行事はもとより、体育の授業で50メートル走のタイムを計ることも難しいという。赤銅校長は「歴史ある船場地域に残る最後の小学校として、地域と協力しながら工夫していきたい」と話す。
5年で2千人増
不動産調査会社の「東京カンテイ」(東京)によると、今年12月までの5年間で大阪市内に竣工した分譲マンションは530棟余り(約4万9千戸)。うち、約35%に当たる170棟余り(約2万戸)が北、中央、西区の「都心3区」に集中し、その中の30棟余り(約1万戸)がタワーマンションだ。
学校基本調査などによると、少子化を背景に平成30年以降、大阪府内の児童数は毎年約5千人のペースで減り続けるが、大阪市内は11万人余りでほぼ横ばい。令和2年度までの5年間で都心3区では約2千人増加しており、ピークを迎える12年ごろには14歳以下が3万8千人になるという推計もある。
教室不足への対応を迫られた大阪市は平成29年、市長がトップのプロジェクトチームを設置。堀川小(北区)や南大江小(中央区)などでも校舎の増築を進め、令和6年度には中之島に小中一貫校を開校させる予定だ。