二酸化炭素を吸収する“海藻の森”をラッコが救う

豊かな生態系がもたらす多様なメリット

モントレー湾のラッコが守るのは、ジャイアントケルプの森だけではない。ラッコは大規模な潮間帯湿地であるエルクホーン湿地帯へもやってきて、アマモ(同じく炭素を隔離する海草)の繁殖も促している。

ただし、ラッコのアマモに対する影響はもっと間接的なものだ。ラッコはカニを食べ、カニはウミウシなどの無脊椎動物を食べ、ウミウシはアマモに生える藻を餌とする。それゆえ、ウミウシを餌にするカニの数が減ることは、アマモにとっては都合がいい。ウミウシが藻を食べてくれることでアマモは清潔を保て、日光を十分に吸収できるようになるからだ。ラッコの個体数が回復したおかげで、エルクホーン湿地帯のアマモは過去30年で6倍に増えているという。

マングローブ林やエルクホーンのような潮間帯の湿地は炭素を大量に貯留する。「こうした海洋生態系は、陸上の生態系の最大10倍のペースで二酸化炭素を吸収します」と、非営利の環境保護団体であるコンサベーション・インターナショナルで海洋科学およびイノベイション担当バイスプレジデントを務めるエミリー・ピジョンは言う。「炭素は海中の植物が根を生やす土壌の中に蓄積され、1,000年に及ぶ長期間にわたって貯留されます。つまり、海では陸上よりも深いところで炭素が豊富に蓄積される密な生態系があり、それゆえ陸に比べて豊富な量の炭素を保持できるのです」

湿地の回復は違う意味でも生態系に重大な役割を果たすと、モントレーベイ水族館の海洋保全戦略担当バイスプレジデントであるエイミー・デビッドは指摘する。「こうした生息地は、嵐による被害の緩和や食料生産、ろ過作用による水質浄化といった意味でも必要です」と彼女は言う。「河口地帯にあるエルクホーン湿地帯でラッコが果たしてきた大きな役割がそれです。エルクホーンは農業を含むさまざまな産業に利用されてきた悪例として知られていますから」

健全な生態系は持続可能な漁場の維持にもつながり、地域のコミュニティに生活の糧をもたらす。加えてモントレー湾のラッコたちは、そのかわいらしさゆえにまた別の恩恵を運んできてくれた。見物にやってくる観光客と、観光客たちが地域に落としてくれるお金だ。

こうして連鎖的にもたらされる利益があるからこそ、環境保護活動家はこぞって自然に根ざしたブルーカーボン関連の対策を打ち出し、生態系を回復し気候変動に対抗しようと取り組んでいる。こうした取り組みは地域の住民、気候、生態系のすべてにとってプラスになるのだ。とはいえ、ウニとカニたちにとってはありがたくないかもしれないが、これらの生物が多少減ってもあまり惜しまれはしないのではないだろうか。

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