首相、安倍時代の課題〝決着〟 距離感 政権左右も

政府が配布した布マスク(アベノマスク)
政府が配布した布マスク(アベノマスク)

岸田文雄首相が安倍晋三政権時代に批判を浴びた課題の「処理」を進めている。新型コロナウイルス対策として全国民に配布した布製マスクや「桜を見る会」などで、自民党内には、最大派閥を率いる領袖(りょうしゅう)として影響力を持つ安倍氏との距離感を懸念する向きもあるが、首相は外交などで安倍氏の意見を重視する姿勢も見せている。両氏の関係は今後の政権運営を左右する可能性もある。

首相は12月に入ってから、安倍政権時代から積み残されていた案件を矢継ぎ早に処理した。

21日の記者会見では、安倍政権が昨年、全国民や介護施設向けに調達した布製マスクの保管分を希望者に配った上で、余った分は今年度内に廃棄する方針を打ち出した。首相は、当時はマスクの配布で供給不安が解消されたと説明し「所期の目的は達成された」と強調した。布製マスクは「アベノマスク」とも揶揄(やゆ)され、昨年8月から今年3月までの保管料は6億円にも上り、「税金の無駄遣い」との指摘が出ていた。

これに先立つ14日の衆院予算委員会では、歴代首相が主催してきた「桜を見る会」の招待者をめぐり、安倍政権で批判が相次いだことを踏まえ、自身が在任中は開催しないと明言した。

さらに15日には、学校法人「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題でも国が損害賠償請求を受け入れる決断を下した。首相は翌16日の参院予算委で「できるだけ丁寧に対応しなければならない。真摯(しんし)に説明責任を果たしていかなければいけない」と説明した。

一連の対応に関し、政府関係者は「どの問題がいつの政権のものといった意識は首相にはない」と話すが、党内には、派閥領袖となり、存在感を高める安倍氏との関係を危惧する声もある。

一方、来年2月の北京冬季五輪をめぐっては、首相は政府関係者の派遣を見送ると表明した前日の23日に国会内の安倍氏の事務所を訪問。五輪への対応などについて意見交換した。首相は外交などに関しては安倍氏の意見を受け入れているとみられる。

「首相は今は静かにしているが、だんだんと『我(が)』が出てくるだろう。安倍氏ともバチバチやることになるかもしれない」

麻生派幹部は今後、岸田政権が安定軌道に乗ってきた場合、政権運営をめぐり首相と安倍氏の対立に発展する可能性を予言した。(千田恒弥)