九州・山口この1年

㊦政界、一寸先は闇 明暗分かれた自民重鎮

「天神ビッグバン」による規制緩和1号として10月に完成した天神ビジネスセンター
「天神ビッグバン」による規制緩和1号として10月に完成した天神ビジネスセンター

政界、一寸先は闇-。

4年ぶりとなった10月の第49回衆院選は、自民党の川島正次郎元副総裁が言ったとされる政治の世界の格言を改めて痛感させた。

象徴的だったのが閣僚や党要職を歴任した自民党大物同士がぶつかった山口3区だ。当選10回の河村建夫氏と参院からくら替えした林芳正氏が公示直前まで激しい公認争いを繰り広げた。

 引退する意向を正式に表明した自民党の河村建夫元官房長官=10月18日、山口市
引退する意向を正式に表明した自民党の河村建夫元官房長官=10月18日、山口市

河村氏が後ろ盾としていたのは所属する二階派を率いる二階俊博幹事長だった。二階派は、公認決定に大きな影響力を持つ幹事長の権勢をかざし、くら替えをもくろむ林氏に対し「除名」もちらつかせた。

しかし、二階派の圧力は逆に、明治以降、多くの首相を輩出してきたことを自負する長州人の反発を買った。林氏は7月、首相の座を目指すため衆院選への立候補を正式に表明した。

記者会見では、自民党県議団全員が署名した推薦状が林氏に手渡され、二階氏ら党重鎮が背後に控える河村氏に対し、林氏は地元支持の厚さを演出した。

9月、菅義偉首相が党総裁選への不出馬を表明すると潮目が変わった。菅氏の退任とともに二階氏も幹事長を交代し、河村氏は最大の後ろ盾を失った。

総裁選の結果、菅氏の後任には林氏が所属する岸田派会長の岸田文雄首相が就任し、林氏には強い追い風が吹いた。結局、党本部の情勢調査でも河村氏を圧倒していたこともあり、林氏が公認を得た。林氏は選挙でも圧勝し、当選後は早速、岸田内閣の外相に起用された。

不出馬に追い込まれた河村氏は議員を引退。出馬を見送る代わりに、党本部は河村氏の長男、建一氏の比例代表での処遇を約束したが、地元の中国ブロックではなく、北関東ブロックに回され、落選した。

菅政権の退陣と幹事長の交代、その後の岸田政権誕生という権力の激動は河村、林両氏ともに当初、予想し得なかったはずだが、両氏の明暗はくっきりと分かれた。

「歴史の一こまになった思いだ」。河村氏は選挙後、支持者らに無念さをにじませた。

衆院選では自民、公明の与党が安定した議席を確保した一方、野党第一党の立憲民主党は後退し、日本維新の会が躍進した。変化した勢力図が来年夏の参院選にどう影響するか。目をこらしていきたい。(小沢慶太)