クリスマスだというのに、私は一日中ベッドの中。半月前に事故にあい、寝込んでいたのだ。
当時はアメリカに住んでいたので頼れる身内もいなかった。夫が用意してくれた簡単な夕食を食べ、またベッドにひとり横たわった。「いつもなら子供たちが喜びそうなごちそうを作ってお祝いしてるのに…」。そう考えると悲しくて情けなかった。
突然、リビングにいた夫と幼い子供たちが「ちょっと来て。早く」と呼ぶ。はうようにして行くと、玄関先で友人家族がそろって「メリークリスマス!」。
びっくりしていると、「大変だったね。事故にあったんだって?」と涙ぐんでいた。クリスマス礼拝で、私だけがいなかったのを見て夫に聞いたらしい。
少し話した後、友人家族のパパさんが、おもむろにコホンとひとつせきをして言った。「マシューが今からバイオリンを弾きます。曲は『きらきら星』。どうぞー」
小学1年生のマシューが、ちょっぴり緊張しながら演奏してくれた。少し音が外れた『きらきら星』は、心がこもっていて涙があふれた。
拍手の後「次の曲は…」とパパさんが言ったとき、マシューは小声で「僕、この曲しか弾けないよ」。パパさんは「そうなのか…。えー、次の曲も『きらきら星』です!」。友人家族もうちの家族もみんなで笑って、また『きらきら星』を聴いた。
泣き笑いの温かいひとときだった。
大変だった時期のクリスマス。だけど、一生心に残る素敵なプレゼントをもらった。
山本俊恵 56 大阪府八尾市