【モスクワ=小野田雄一】ロシアは25日、前身となったソ連の消滅から30年の節目を迎えた。ロシア国民にとってソ連の崩壊は、統制社会の終焉(しゅうえん)と民主国家としての新生を意味し、メディアは特集を組むなどしているが、プーチン政権は公式行事を予定していない。ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と呼ぶプーチン大統領の歴史認識などが背景にあるとみられる。
ロシア最大の民営通信社インタファクスは8月、自社サイトに特設ページを開設。連日、30年前の同じ日にソ連で起きた動きを写真などを交えて伝えている。
同社は「30年前の出来事を回想し、再認識する機会にするのと同時に、現代ロシア成立に先立つ歴史的な時期を若い世代が客観的に知ることができるようにするため」と説明する。
一方、プーチン政権が関連行事を行わないのは、大統領自身の歴史認識に加え、国内統制を強めている政権側にとって、民主化への希求が背景の一つとなったソ連崩壊の記憶を社会に呼び起こすのは都合が悪いという事情がある。プーチン氏は23日の年末記者会見でも、30年を迎えることに特段の言及をしなかった。
社会主義を掲げる連邦国家として1922年に成立したソ連は、先の大戦で戦勝国となり、東西冷戦期には米国と並ぶ超大国として東側陣営をリード。しかし徐々に西側との経済格差や技術格差が顕著となり、構成各国では独立や民主化の機運が高まった。ゴルバチョフ大統領による改革路線も延命にはつながらず、同氏は91年12月25日に大統領を辞任。ソ連は消滅した。