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朴槿恵恩赦の政治学

 韓国の朴槿恵前大統領
 韓国の朴槿恵前大統領

文在寅(ムンジェイン)政権下で5年近く投獄されていた朴槿恵(パククネ)前大統領の釈放が決まった。文大統領任期中の彼女に対する赦免(恩赦)は政治的にも世論的にも予想の範囲内で、時期の問題だけが残っていた。政権末期の大統領としてはこの年末が最後のチャンスと考えたようだ。

獄中の政敵への〝温情〟は自らの人間味と懐の深さを世論に印象付け、政権の評価も高まる。同時に当然ながら次期大統領選に向け与党へのプラス効果も狙っている。こうした「投獄と釈放の政治ドラマ」はこれまでも繰り返されてきた。

背景には韓国が伝統的に法治主義ではなく、むしろ〝情治主義〟が強いということがある。刑罰ではみせしめが重視され、有罪、無罪の裁判より身柄拘束や手錠姿に関心が強いのもそのせいだ。「情治」とは別の言葉でいえば「ポピュリズム(大衆迎合主義)」だが、民心の動向重視という意味では悪いことではない。

朴槿恵弾劾の「ロウソク・デモ」という世論の〝感情〟で政権を取った文大統領が今回、別の「情」で恩赦を断行しても世論はそれで納得する。韓国には「情治主義」からくる融通無碍なところがある。それが外交にも影響し、日本はいまなお「過去を謝れ」と言われ続けている。だから法治主義の日本は頭が痛い。(黒田勝弘)