米医療人員が1年半で3割減 コロナ燃え尽き症候群で離職続々

【ニューヨーク=平田雄介】25日のクリスマスを控えた米国で新型コロナウイルス感染再拡大による医療逼迫(ひっぱく)が懸念されている。旅行や帰省、家族の集まりなど、感染の機会が増えると見込まれる一方、昨年来の長引くコロナ禍により、医師や看護師ら医療関係者の離職が相次ぎ、人手不足が深刻化しているためだ。

「医療スタッフの労働力という点で、国家的な危機にある」。米病院協会のリック・ポラック会長は米公共ラジオ(NPR、21日付電子版)でこう語った。

調査会社モーニング・コンサルト(MC)の調べでは、コロナ対応が本格化した昨年2月以降、米国で今年9月までに退職や一時帰休のため約3割が離職していた。複数回答で理由を聞いたところ、54%がコロナ禍を挙げた。49%は燃え尽き症候群や過労だった。

昨年春に離職した看護師歴14年の女性は米誌に「心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたのが理由だった」と話す。患者に家族が最期の別れをできるよう、腕が腫れあがるまで手動式の人工呼吸器を動かした。だが、患者の死後に家族から、「できること全てをやったのか」と問われ、ショックを受けた。

MCの調査で「人手不足で医療態勢に影響が出ている」との答えは79%。現場で働く救命医らに取材したNPRのウィル・ストーン記者は「多くの病院が過去に感染が拡大したときのような総力戦を展開できなくなっている」と伝えた。

初期研究ではオミクロン株感染で入院、死亡に至るリスクは、デルタ株より低いとされる。しかし、ファウチ首席医療顧問は「感染力が極めて強い」とし、感染者が大きく増えれば重症患者も増えて、医療機関の負担が増すと警告する。

米厚生省や米ミネソタ大の分析を基にNPRがまとめた16日まで1週間の各州の病院の逼迫度は、西部ニューメキシコなど9州ですでに50%を超えていた。

全米の新規感染者は先月25日の感謝祭の祝日から増加傾向が続き、今月23日まで1週間の新規感染者数の平均は18万2682人。今秋の感染拡大期のピーク約17万人を上回っている。

年末にかけ、米国内の旅行者は延べ1億900万人に上り、昨年比で184%増加する見通し(米自動車協会調べ)。政府は逼迫度の高い病院に米軍の医師ら約千人を派遣すると発表したが、さらなる支援策を求める声が上がっている。

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