世界の自転車ロードレースへ広島からの挑戦

山間を走り抜けるヴィクトワール広島の選手たち=2016年1月、広島市安佐南区(鳥越瑞絵撮影)
山間を走り抜けるヴィクトワール広島の選手たち=2016年1月、広島市安佐南区(鳥越瑞絵撮影)

中国・四国地方では初の自転車ロードレースのプロチームとして2015年に誕生した「ヴィクトワール広島」。創設8年目となる22年シーズンに向け、熱気が高まっている。リーグ優勝を狙えるメンバーをそろえ、海外レース参戦も表明。立ち上げ時から東奔西走してきた中山卓士監督(32)は「日本一強くなって、日本一愛されるチームへ」と意気込んでいる。

2022年シーズンに向けて意気込みを語った(左から)中山卓士監督、阿曽圭佑選手、柴田雅之選手、中村圭佑選手
2022年シーズンに向けて意気込みを語った(左から)中山卓士監督、阿曽圭佑選手、柴田雅之選手、中村圭佑選手

新体制で心機一転

12月中旬、ヴィクトワール広島は22年シーズンの新体制や日程などを発表した。中山監督は「広島に必要とされて愛されるチームになるためにも、強くならなくちゃいけない」と抱負を熱く語った。

チームは20年まで全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)主催の「Jプロツアー」に参戦してきた。

だが、チーム方針もあって、21年シーズンは地域創生を目指して同年に発足したばかりの新リーグで、地域密着型のプロチームが集まった「ジャパンサイクルリーグ(JCL)」に参戦。全国9チームで全12戦が行われ、ヴィクトワール広島は創設7年目ながら4位に食い込んだ。

22年シーズンは全選手10人中8人が新加入メンバー。「戦力が大幅に上がる」と中山監督の鼻息は荒い。

注目の1人は、ライアン・カバナ選手(26)=オーストラリア。20年、アジアで伝統あるロードレースの一つ「ツール・ド・台湾」で総合2位および区間優勝に輝くなど国際レースで活躍した。カバナ選手は「ヴィクトワール広島のためにレースをする機会を得たことは、私にとって特別なこと」とコメント。

口説き落とした中山監督も「世界レベルの選手」と胸を張る。

22年シーズンから主将を務める阿曽圭佑選手(29)は21年11月に行われた第9戦の「大田原ロードレース」でプロ初優勝。リーグ戦個人総合3位に輝くなど、24年パリ五輪を目指す逸材だ。

「那須ブラーゼン」(栃木県那須塩原市)から移籍した柴田雅之選手(27)が副主将を務め「積極的で頼もしい選手。戦い方が広がる」と期待は大きい。チームは22年シーズン、世界自転車競技連合(UCI)管轄のアジアツアーにも参戦する予定だ。

2021年シーズン第9戦「大田原ロードレース」で初優勝し、笑顔で表彰台に立つ阿曽圭佑選手(中央)=2021年11月6日((C) Nobumichi Komori)
2021年シーズン第9戦「大田原ロードレース」で初優勝し、笑顔で表彰台に立つ阿曽圭佑選手(中央)=2021年11月6日((C) Nobumichi Komori)

地域密着で

東京育ちの中山監督は、高校から自転車競技を始めた。実業団などを経て、自転車競技の本場欧州のベルギーを拠点に4年間、欧州各地のレースを転戦してきた。だが、世界トップの中で日本人選手が挑んでいく厳しさを目の当たりにして帰国。23歳で引退した。

その後、知人から勧められたこともあり、自分自身を見つめ直すためにも広島市内にある寺にこもった。「最初は1週間の予定。でも結局、3カ月ぐらいいたんじゃないかな」。寺では「人のために何ができるか、何をしているか。自利利他を考えさせられた」。

そんな中で、地域密着型で自転車の魅力を伝えたくなったという中山監督。その話を聞いてくれたのが、自転車愛好家で広島の有力企業の幹部だった。「運営などのイロハを教えてくれた」。有力チームがなかった広島で「サイクリングの聖地」の夢を描いた。

立ち上げ当初はスポンサーは約20社。だが、足を運び続け、今では約130社にまで増えた。

2021シーズン第9戦「大田原ロードレース」でプロ初優勝を飾り、ガッツポーズを見せる阿曽圭佑選手(手前左)=2021年11月6日((C) Nobumichi Komori)
2021シーズン第9戦「大田原ロードレース」でプロ初優勝を飾り、ガッツポーズを見せる阿曽圭佑選手(手前左)=2021年11月6日((C) Nobumichi Komori)

世界を舞台に

選手は県外出身者がほとんどで、中山監督の熱烈オファーがあり、チームに魅力を感じて入ってきた選手ばかりだ。中山監督は「阿曽の存在は大きい。広島は練習で走れる環境などもある」というだけでなく、「地域密着型でアジアツアー参戦を売りに、これから西のチームといえば『ヴィクトワール広島だよ』と言ってきた」と強調。そして「何より広島には熱狂的に応援してくださるファンが多い」と感謝する。

選手は年俸制で、実力によっては「正直もらっていないと言えるレベルかもしれない」というほど厳しい生活を強いられることもあるという。

練習は1日100キロ以上に及び、月約3千キロ。年間で3万6千キロにもなる過酷さだ。大会も全国各地で展開。選手の体調管理のために宿泊先は個室こそ維持しているができるだけ経費も節減し、車での移動は10時間以上に及ぶこともある。

それでも「広島は活気にあふれている。もっと自転車ロードレースを知ってもらい、チームがあってよかったと思ってもらえるようになりたい」と柴田選手。

広島市出身の中村圭佑選手(23)は「優勝に近づいているチーム。結果で恩返ししたい」と意気込む。阿曽選手は「チーム力を底上げし、士気も上げていく主将としてやっていく。自身にとっても飛躍の1年にしたい」と期待に胸を膨らませる。

将来的な目標はこのチームで世界を舞台に戦うことだ。

22年シーズンのJCLの地元大会は、7月9日に広島県立中央森林公園(三原市)、7月10日に広島市西区商工センターで開催予定。いよいよ旋風を巻き起こすか。(嶋田知加子)