主張

変異株の市中感染 恐れすぎるな甘くみるな

世界中で感染が拡大している新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の市中感染が国内でも確認された。

オミクロン株は従来の変異株よりも感染力が強いとされ、今後の急拡大を想定した備えを急がなくてはならない。

オミクロン株は11月に南アフリカで発見され、わずかの間に世界中に広がった。英国では、新型コロナの1日の新規感染者が過去最多の10万人を超えた。1割強がオミクロン株と確認されている。

一方で、英エディンバラ大と南アフリカ国立伝染病研究所の研究チームはそれぞれ、オミクロン株による感染者の入院リスクは「従来の変異株よりはるかに低い」とする研究結果を公表した。

この新変異株については、まだ分からない点が多い。入院に至るリスクが低いとしても、ゼロではない。恐れすぎてはいけないが、甘くみてもいけない。

国は水際対策を徹底し、個々の国民はマスクの着用、手洗い、3密の回避といった行動の基本を継続する。ウイルスの変異に対しても、やるべきことの大筋は変わらない。諸外国に比べ国内が平静を保てていたのは、これらの努力の成果といえる。ただし、水際対策などは感染拡大を防ぐ時間稼ぎの手段ととらえるべきだ。

岸田文雄首相は23日、「わが国は水際対策によって得られた時間的余裕を使って予防、検査、早期治療という一連の流れを強いものにしていく」と述べた。その認識は正しい。問題はその備えが十分といえるかだ。

政府は3回目のワクチン接種について、従来2回目と8カ月以上空けるとしていたが、医療従事者らに2カ月、一般の高齢者では1カ月前倒しすると決めた。オミクロン株は免疫を回避する特徴がある一方で、追加接種には重症化を防ぐ効果が期待できる。さらなる前倒しに向けて十分な調達と円滑な供給態勢を進めてほしい。

医療提供体制の整備や検査、隔離のための宿泊施設の確保に万全を期すことも当然である。

この危機を乗り越えることによって、社会は何を得られるのか。時勢を逃さず、首相が適宜、国民に語りかけることも重要だ。

里帰りや忘年会、初詣など、移動や人の集まる機会が増える年末年始の行動についても、政府が一定の指針を出してほしい。