次世代の邦画界を担う才能の発掘などを目的に、昭和52年に始まった映画祭「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」が関西では1月8日から京都文化博物館(京都市中京区)で開かれる。関西での開催は約4年ぶり31回目。地元ゆかりの監督作品も少なくない上、日本の映画産業発祥の地とされる太秦(うずまさ)を抱える同市での開催とあって、盛り上がりそうだ。
審査員が選んだ18作品上映
同フェスで初回から続く自主映画のコンペティション(競技)「PFFアワード」では、これまでの入選者から、国内外で活躍する気鋭の監督約160人を輩出している。
昨年の伊ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した「スパイの妻〈劇場版〉」の黒沢清監督をはじめ、米で今年9月に公開された「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」でハリウッドデビューを果たした園子温(そのしおん)監督、社会現象化した「フラガール」(平成18年)や傑作ミステリー「悪人」(22年)で高く評価された李相日(リサンイル)監督、世界が認めた「鉄男」(元年)で知られる塚本晋也監督らが世に出るきっかけを作った。
今回も例年並みの489本の応募作があり、俳優の池松壮亮(そうすけ)さんや、映画監督の今泉力哉さん、芥川賞作家の柴崎友香さんら5人の最終審査員が選んだ18作品を上映する。
関西ゆかりの監督たち
京都や関西ゆかりの監督も少なくない。今年のグランプリ作品「ばちらぬん」で監督・脚本・主演を務めた東盛あいか(沖縄・与那国島出身)は、京都芸術大学で学び、本作を卒業制作として撮った。
タイトルは与那国島の言葉で「忘れない」の意味。主人公の少女が現実と異世界を往来しながら、与那国島の過去から未来を伝えるという、ドキュメンタリーとファンタジーが混在した実験作で、池松さんも絶賛した。
準グランプリを受賞した「グッバイ!」は、大阪の「ビジュアルアーツ専門学校 大阪」に通っていた中塚風花監督の卒業制作。「壁当て」の井上朝陽監督は現在同専門学校に、「帰路」の制作時は高校生だった高橋伊吹監督は立命館大学に在学中だ。
タイの気鋭の作品も
また、「の・ようなもの」(昭和56年)など、今月20日で没後10年となる森田芳光監督の代表作を上映する特集では、同監督の偉業を見つめ直す。
自身の2作目「マリー・イズ・ハッピー」(2013年)が同年のベネチア国際映画祭に出品されるなど、国際的に活躍する注目のタイの気鋭、ナワポン・タムロンラタナリット監督の作品8本も上映。「PFFアワード」のグランプリ受賞監督の長編デビュー作2本を、劇場公開に先駆けて関西エリアでは初上映する。
PFFのディレクター、荒木啓子さんは「久々の関西での開催をうれしく思っています。これからの映画界を担う才能を一挙に集めました。映画界を志す人々の本当の声を、作品とともに届ける8日間。映画ファンにとっても楽しい時間をお届けしたい」と話している。
チケットは一般1300円。購入は専用サイト(https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=pff)で。会場ではチケットの発売・発券はしない。(岡田敏一)