分配重視の「16カ月予算」 暮らしどう変わる

保育の現場(写真はイメージ)
保育の現場(写真はイメージ)

24日に閣議決定された令和4年度予算案は、処遇改善が遅れた介護職や保育士などへの賃上げを軸に、暮らしを支える「分配」戦略に力点が置かれた。少子化対策など子供関連の支援策、非正規労働者や女性の就職支援も充実させる。ただ、新型コロナウイルス禍の長期化や高齢化で財政状況が厳しいことを踏まえ、国民に新たな負担増を求める政策も一部で盛り込まれた。

4年2~9月分の賃上げ費用は3年度補正予算で既に手当てした。介護職や保育士、障害福祉サービス事業所の職員の引き上げは月額3%程度(9千円)。看護師は新型コロナウイルス感染症対応病院などで働く職員を対象に1%程度(4千円)引き上げる。10月以降の引き上げ分の費用は4年度予算案で計上し、介護、障害福祉サービスの職員らについては臨時の報酬改定を実施して賄う。看護師も診療報酬改定を行い上げ幅を3%程度に高める。

政府がこうした職種の処遇改善を重視するのは、仕事の負担に比べ賃金が低いからだ。厚生労働省の調査では、2年の職種別平均賃金で介護職や保育士は全産業平均を下回る。処遇改善の遅れから慢性的な人手不足も起きており、今回の賃上げは現場で働く人や就業を目指す人に朗報となる。

また、一般企業の従業員向けには、賃上げに積極的な企業の法人税負担を軽減する「賃上げ税制」の拡充を4年度税制改正で実施する。賃上げの動きが広がれば財布のひもがゆるみ、個人消費も活性化しそうだ。

さらに、4年度予算案では子供関連の支援策も充実させた。少子化対策では、4年4月から不妊治療の保険適用範囲を拡大する。現在は一部を除いて全額自己負担だが、保険適用になれば原則3割負担で済む。

病気の親や幼い兄弟を世話する18歳未満の「ヤングケアラー」に対する支援も強化。小学校高学年で専門性の高い教科を教える「教科担任制」の推進では、公立小学校の教職員定数を1030人増員する。子育て中の母親らを対象とした就職活動の支援も強化する。

一方、社会保障制度の持続可能性を担保するため、負担増も併せて実施する。コロナ禍で雇用調整助成金の利用が増えて財源が枯渇したことを受け、失業手当などの財源となる雇用保険料の料率を4年10月から引き上げる。月収30万円の会社員の場合、保険料の支払いが月900円から1500円に増えることになる。

また、4年度から人口の多い「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になり始め、社会保障費の増加に拍車がかかるため、4年10月から一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる。

分配戦略は3年度補正予算と4年度予算案を合わせた「16カ月予算」に通底した重点課題になった。所得を増やし、岸田文雄政権が目指す「成長と分配の好循環」の呼び水にする思惑がある。ただ、分配の原資を生む成長戦略が具体化できなければ賃上げも一過性で終わりかねない。今後は国民が継続して恩恵を感じられる仕組み作りが必要となる。(永田岳彦)