鑑賞眼

「売れる」難しさリアルに 舞台「あいつが上手で下手が僕で」

舞台「あいつが上手で下手が僕で」
舞台「あいつが上手で下手が僕で」

「遭難劇場」と揶揄(やゆ)される、さびれたお笑いライブハウス「湘南劇場」に〝島流し〟にされた芸人たちが奮闘する姿を描いた同タイトルの連続ドラマ(日本テレビ)を舞台化、ドラマのその後を描いた。俳優が芸人として賞レースを戦い、実際に舞台で漫才を披露するのが見ものだ。

ドラマから引き続き、鳴かず飛ばずの芸人たち。「エクソダス」の時浦可偉(荒牧慶彦)と島世紀(和田雅成)は、コンビとしての実績十分、安定感あるボケとツッコミは健在だ。「ロングリード」の湾野岳(橋本祥平)と犬飼佑(田中涼星)は幼馴染のコンビならではの空気感でなごませる。

驚いたのが、「らふちゅーぶ」の鳴宮良(崎山つばさ)と蛇谷明日馬(鳥越裕貴)、「アマゲン」の現多英一(陳内将)と天野守(梅津瑞樹)のコンビだ。崎山の迫力、鳥越の身体能力は舞台で見るとより勢いが感じられ、陳内の対応力と柔軟性、梅津の設定ゆえの特異な動きも、生の舞台でより輝く。

SNSがバズったことから売れっ子になったピン芸人の存在や、売れるためにSNSを有効活用させようとする新たな支配人、サカタ(六角慎司)など、強烈ながらも、「あるある」とうなずきたくなる現代のネタが満載だ。

しきりを使って二階建ての建物を箱型に分け、芸人たちの姿をあますことなく見せるセットも舞台ならでは。フレームから外れた演者の姿も追いかけることができ、〝推し〟の芸人を追いかけたい観客にはうれしい仕掛けだ。

さらに舞台版のオリジナルキャラクター、先輩芸人の「マリーゴールド」の片山(富田翔)、須藤(小笠原健)の存在がいい。本来の漫才を封印し、怪談を取り入れたネタで売れっ子になった二人は、売れるために躍起になっている若手芸人たちに、「売れた先にある苦悩」を示す。自分たちがやりたいことで売れるとはかぎらないし、売れたとしても人気がいつまでも続くとはかぎらない現実を突きつけ、物語に一気に奥行きが出た。「お笑いで生きていくのは難しい。好きなお笑いで生きていくのはもっと難しい」というせりふは身につまされる。

ラストには、各コンビがキャラクターソングを歌い踊るステージもついている。ノンストップの120分、歌って踊って芝居して漫才して…。売れない芸人を演じた8人はいずれも舞台出演が途切れない売れっ子たちだが、いやはや役者というのも大変な稼業である。

26日まで、大阪府東大阪市の東大阪市文化創造館。26日はライブ配信あり。問い合わせは、0570・200・888。(道丸摩耶)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。