露、「NATO弱体化」へ揺さぶり、米、主導権奪われる

ウクライナをめぐり軍事的緊張を高めるロシアのプーチン政権に対し、バイデン米政権の守勢が目立ってきた。ウクライナ国境付近に大規模部隊を集結させるロシアは、さらに米国が盟主の北大西洋条約機構(NATO)の弱体化を図る要求を突きつけた。ロシアとの衝突を避けたい米・NATO側は主導権を奪われる形で外交交渉に臨まざるを得ない状況に追い込まれた。(ワシントン 大内清、ロンドン 板東和正、モスクワ 小野田雄一)

露メディアによると、ラブロフ露外相は22日、来年1月初めにも米国とNATOがそれぞれ、ロシアと協議すると明らかにした。議題は、露側が17日に公表したロシアの「安全保障」のための要求だ。米国とNATOも協議する見通しを示している。

ロシアは事実上、①ウクライナなど旧ソ連構成国のNATO加盟拒否②ポーランドやバルト三国など旧共産圏に展開中のNATO部隊の撤収③欧州に配備した米国の核兵器の撤去を要求し、米国、NATOにそれぞれ条約、合意文書を結ぶように求めている。

プーチン大統領は23日、年末恒例の記者会見で「ボールはNATO側にある。即座に(ロシアの安全を)保証せねばならない」と迫った。

NATOは東西冷戦後の1997年、敵対関係を終わらせる基本文書に署名。東欧に恒久的な大規模戦力を追加配備しないとした。その後、東方に加盟国を拡大。2014年のロシアによるウクライナ・クリミアの併合後にはポーランドなど東欧に部隊を常駐させ、ロシアが反発していた。プーチン氏は会見でNATOがロシアを「だました」とも一方的に非難した。

米国、NATOとしてロシアの要求は到底受け入れられない内容だ。ただ、ロシアのウクライナ侵攻が懸念される中、緊張緩和のため協議に引き込まれた形となり、具体的な提案などを描けているかは不透明だ。

米国は現在、中国対応に注力するためにロシアとは「予測可能な関係」を築くことを目指し、中露との二正面競争を避けようと腐心している。

バイデン大統領は今月上旬、露軍がウクライナに侵攻した場合、同国に米軍を派遣する可能性を問われ、「ウクライナは(NATOの集団防衛の義務の)範囲外」と否定。ウクライナが希望するNATO加盟にもかねて否定的見解を示してきた。ロシアを刺激しないためで、米側には欧州が事態打開に向けて主体的に関与することへの期待も強いとみられる。

一方、欧州もロシアに強く出られない事情がある。イタリアのドラギ首相はロシアのウクライナ侵攻に懐疑的な見方を示すが、ロシアへの不信が強いリトアニアは「本当に戦争の準備を進めている」(ランズベルギス外相)と強調。各国に温度差がある中で、侵攻時の厳しい経済制裁などで連携できるか疑問が残る。

欧州には価格が高騰する天然ガスの輸入をロシアに大きく依存している弱点もある。米国はロシアによるウクライナ侵攻時には、建設を終えた独露間のガス・パイプライン「ノルドストリーム2」の稼働阻止も検討するが、ドイツのショルツ首相は16日、「民間のプロジェクトだ」とし、稼働承認手続きは政治と関係がないとの認識を示した。