主張

北日本の巨大津波 早期避難率10割を目指せ

北海道から東北地方の太平洋沖では、平成23年の東日本大震災=マグニチュード(M)9・0=を上回る規模の巨大地震の発生が「切迫している」とされる。

政府が21日に公表した被害想定では、東日本大震災の北側の日本海溝沿いでM9・1の地震が発生すると、最悪の場合の死者は19万9千人に達する。北海道沖の千島海溝で想定されるM9・3の地震による死者は10万人にのぼる。

いずれの想定も、東日本大震災の死者・行方不明者(1万8425人)を大きく超える。死者のほとんどは津波によるものだ。

数字に絶望してはならない。

最悪の想定は、寒さ、積雪、路面凍結など避難行動を妨げる要因が重なる冬の深夜に巨大地震が発生し、すぐに避難する住民が2割にとどまった場合だ。

5人に1人ではなく、全住民ができるだけ早く、安全な場所に逃れる。津波から命を守る手立ては、それ以外にはない。

全住民の早期避難を大前提としたうえで、寒さや積雪などの障害を一つ一つ、解消、克服しておく必要がある。高齢者や障害者の移動手段はどう確保するのか。「安全な場所」が遠い地域では、避難施設を新設する必要もあるだろう。国と自治体には、住民の避難行動を全面的に支える責務がある。その出発点となるのは、住民一人一人の避難意識である。

被害想定では、避難意識の向上や避難施設の整備などの対策を講じれば、死者は8割減らせると試算されている。避難意識や対策の効果と重要性を示すものかもしれないが、津波防災で目指すべきは「死者8割減」ではない。

津波は、地震という前触れを伴う災害であり、危険地域と安全な場所はわかっている。どんな障害や困難があっても、命を落としてはならない。

平成5年の北海道南西沖地震で、奥尻島では地震発生から数分後に大津波に襲われた。多くの犠牲者を出したが、その10年前の日本海中部地震を教訓に、すぐに避難して助かった人もいた。

東日本大震災から11年近くになる。22万人を超える犠牲者を出したインド洋大津波からは、26日で17年になる。

忘れてはならない。そして、命を守る避難行動を、決してあきらめてはならない。