通崎好みつれづれ

『京都手帖』魅力の秘密

『京都手帖』(光村推古書院)。日々の行事予定など、京都に関するさまざまな情報も記されている
『京都手帖』(光村推古書院)。日々の行事予定など、京都に関するさまざまな情報も記されている

最近は、スマートフォンでスケジュール管理されている方も多いと思うが、私は依然手書きの手帳派だ。使うのは毎年いたってシンプルなもの。併せて、いくつかの楽しい手帳を机のそばに置いている。その一つが『京都手帖』(光村推古書院)である。

京都手帖は、その名の通り、見開き2週間の各日欄に、その日京都で開催される行事が記されている。例えば、12月23日なら、「綱掛祭/新熊野神社」「お身拭い式/清浄華院」「かぼちゃ供養/矢田寺」という具合。欄外には、その週から選ばれた行事についての説明がある。昭和5年にヒットした「祇園小唄」の歌碑の前で、舞妓(まいこ)が歌詞を朗読し献花を行う「祇園小唄祭」など、長く京都に住んでいても知らない行事が紹介されており、読み物としても面白い。

 『京都手帖』の見開きページ。日々の欄には行事予定、下部の欄外にはその週から選ばれた行事の説明が記されている
『京都手帖』の見開きページ。日々の欄には行事予定、下部の欄外にはその週から選ばれた行事の説明が記されている

京都のベストセラーとして、書店に平積みされる人気ぶり。2007年度版から数えて来年で16冊目となる。「何か京都の旬のものを紹介できないか」という議案から手帳の形態が発案されたそうだ。22年度版編集担当の大西律子(おおにし・りつこ)さん、熊谷翠莉(くまがい・みどり)さんは、ともに大阪出身。21年度版編集の伊賀本結子(いがもと・ゆいこ)さんは大分出身。他府県出身者の目線も交えながら、京都の人にも愛される手帳を作ることを目指す。

「今月のおすすめ」として紹介するお菓子は、試食を重ね、納得したものを掲載する。各月2つずつ紹介される「ちょこっと英語で京都案内」では、「夏はカバンに靴下を一足入れておきましょう。」とさりげなく京都の流儀を教えてくれるなど、随所に気が利いており、思わずにこっとしたくなる。

『京都手帖』の月初めには、編集者が選んだ「今月のおすすめ」の菓子なども載っている
『京都手帖』の月初めには、編集者が選んだ「今月のおすすめ」の菓子なども載っている

先月23日に京都で開催したコンサートに来てくださった東京のお客さまからは、「京都手帖を見て思い立ち、天台宗の寺院、十輪寺(じゅうりんじ、西京区大原野)まで足を伸ばし、初めて塩竃清祭(しおがまきよめのまつり)に参拝した」とうかがい、うれしくなった。今年は、新型コロナ感染拡大防止のため、中止になった行事も多いだろう。来る年は、京都手帖に記された全ての行事が滞りなく開催されますようにと願うばかりだ。(通崎睦美 木琴奏者)

『京都手帖』の月単位のページ。上部にかわいいイラストがあしらわれている
『京都手帖』の月単位のページ。上部にかわいいイラストがあしらわれている


つうざき・むつみ 昭和42年、京都市生まれ。京都市立芸術大学大学院修了。マリンバとさまざまな楽器、オーケストラとの共演など多様な形態で演奏活動を行う一方、米国でも活躍した木琴奏者、平岡養一との縁をきっかけに木琴の復権に力を注いでいる。執筆活動も手掛け、『木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」』で第36回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)と第24回吉田秀和賞をダブル受賞。アンティーク着物コレクターとしても知られる。

通崎睦美さん(中川忠明さん撮影)
通崎睦美さん(中川忠明さん撮影)