現在は紙の見本で行われている教科書検定について文部科学省が新年度、見本のデジタル化を視野に検討を開始する方針を固めたことが22日、関係者への取材で分かった。デジタル化の実現で従来の検定に比べて作業が簡略化され、文科省、教科書会社双方にとって負担軽減につながる。文科省は新年度予算案に関連経費を計上する。
現在の検定では、教科書会社が申請のために「白表紙本」といわれる紙の見本を作り文科省に提出。審査を行う文科省の教科書調査官や教科用図書検定調査審議会の委員は、白表紙本を読んで場合によっては気になる箇所にメモや付箋を貼る手法を用いて作業を進めている。
一方、デジタルデータによる見本提出が実現されれば、用語検索などが容易になり、検討対象となりそうな箇所の洗い出しがスムーズになる。見本をクラウド上で管理し、気になった箇所に直接書き込みを行うメモ機能などを備えることになれば、調査官や審議会委員による検討が簡略化できる可能性が高い。「膨大な紙の資料に囲まれる」(文科省幹部)検定のペーパーレス化にもつながる。
また、現在の検定は紙の教科書のみが対象で、紙の教科書をデータ化しただけのデジタル教科書は、検定対象外。文科省は令和6年度のデジタル教科書本格導入を目指しており、紙とデジタルの併用のあり方について、4年度にも方向性をまとめる方針だ。
関係者の間では、併用の方向性次第で「将来的にデジタル教科書そのものも検定対象になり得る」との見方がある。事前に検定のデジタル化を導入できていれば、デジタル教科書の検定もスムーズに開始できるとみられる。
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教科書検定 教科書会社編集の教科書が、学習指導要領に沿っている内容か審査する制度。小中学校は全学年、高校は各学年分を原則4年ごとに行う。文部科学省の教科書調査官が各社の教科書見本(白表紙本)に対する調査意見をまとめた後、有識者による文科相の諮問機関「教科用図書検定調査審議会」が審査。教育委員会などの採択を経て実際の使用は検定の翌々年度になる。