「来年1月から、3月を集中取り組み期間とし、政府を挙げて取り組みます。公正取引委員会と中小企業庁が事業所管官庁と連携し、問題となる事例を幅広く把握するための仕組みを作ってまいります。問題が多い業界に対しては立ち入り調査や要請を行い、価格転嫁を行いやすくしてまいります。多くの中小企業が直面する急速な原材料費と、エネルギーコストの上昇についても同様に価格転嫁対策を進めてまいります。賃上げを通じた分配はコストではなく、未来への投資です。きちんと賃金を支払うことは企業の持続的な価値創造の基盤になります。この点を企業の株主にも理解してもらうことが必要です」
「人の価値を企業開示の中で可視化するため、来年度、非財務情報の見える化のルールを策定いたします。デジタル田園都市国家構想についての議論もどんどん進んでいます。デジタル臨調において行政が遵守すべきデジタル原則を策定し、その原則に合うように4万件の法律、政省令、通知などの一括見直しを行います。来春には制度の一括改正のプランを取りまとめます。例えば、制度改革により道路やプラントなどインフラメンテナンスの規制や自動車の定期点検、介護施設における人材配置規制などの合理化を進めてまいります」
「デジタルインフラについては来年3月までに整備計画をお示しいたします。日本全国どこにいても自動走行などの高速、大容量のデジタルサービスを低遅延で使えるよう、10数カ所の地方データセンター拠点を5年程度で整備いたします。5G(第5世代移動通信システム)は、現在3割程度の人口カバー率を2023年度に9割に引き上げるとともに、光ファイバーは、30年までに99・9%の世帯をカバーすべく取り組みます。誰1人取り残されず、すべての人がデジタル化のメリットを享受できる社会の実現を目指してまいります。高齢者をはじめ、デジタルに不慣れな方などをサポートするために、1万人以上のデジタル推進委員を全国津々浦々で展開します」
「先日、車座対話の一環として訪問した会津では、自治体、企業、住民、大学が連携し、まさにデジタル田園都市と呼ぶべき新たな時代の地域づくりを進めていました。住民と協力しながら、デジタルの社会実装を進め、新しい時代の地域づくりを推進するハブとなれる経営人材を国内100地域に展開いたします」
「気候変動問題について、30年度に46%の削減、50年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の目標、これはもちろん堅持いたします。私は気候変動問題は新しい資本主義の中心に位置する問題であると捉えています。エネルギー基本計画といった供給側目線での目標を出すだけではなく、経済社会や産業全体が直面する、数世代に一度の変革をわが国がどう成し遂げるか。経済社会変革の全体像と合わせて道筋を丁寧に示すことが重要です。年明けには、新しい資本主義は実現会議の議論と気候変動問題に関する議論をどのように連携させていくかお示ししたいと思っています」
「第6に外交安全保障です。来年は積極的に首脳外交を推し進める1年にしたいと思っています。先般、オンラインで開催された民主主義サミットに参加いたしました。自由、民主主義、人権、法の支配といった、われわれが大切にする基本的価値を損なう行動に対し、同志国が一致してワンボイスで望んで参ります。日程は調整中ですが、バイデン米大統領とと早期に会談を行い、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化していくとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を新たなレベルに引き上げてまいります」
「経済面では、私が掲げる新しい資本主義の考え方を説明し、ビルドバックベターを掲げるバイデン氏との連携を深め、グローバルな議論をリードしてまいります。私が目指す核兵器のない世界の礎石というべきNPT(核拡散防止条約)の運用検討会議が、7年ぶりに年明け1月4日からニューヨークにおいて開催されます。極めて重要なこの会議を成功させるために、わが国として全力を尽くしてまいります。先般のアフガニスタンにおける経験を踏まえ、海外で邦人が危機にさらされた際の輸送に万全を期すため、自衛隊法の改善について検討を指示いたしました」
「第7に憲法改正です。今国会では、私が首相になってから初めての憲法審査会が開催されました。国会において憲法改正についての議論が始まったことを歓迎いたします。通常国会では、さらに議論が深まることを心から期待いたします。合わせて自民党総裁として、党改革を進めてまいります。年明けから地方の意見も聞きながら、さらに議論を加速させていきます」