一筆多論

パラの成功支えた「裾野」 内畠嗣雅

東京パラリンピック閉会式後、写真撮影に応じる日本選手団=9月5日、国立競技場(佐藤徳昭撮影)
東京パラリンピック閉会式後、写真撮影に応じる日本選手団=9月5日、国立競技場(佐藤徳昭撮影)

初めて視覚障害者のレース伴走をしたのは7年前の5月、東京・荒川河川敷での10キロの大会だった。相棒は40代の男性で、レース自体が初めてだったが、もともと水泳の選手で、体力的に問題はない。私は伴走者として、彼は選手としてそれぞれ、かっこよくデビューするはずだった。

初レースは誰でも、オーバーペースになる。集団の中で高ぶる気持ちを抑えられないのだ。彼は2キロくらいでもう、「ウオーッ!」と声を上げんばかりだった。だが、ペースメークは伴走者の役目ではない。スピードを上げ過ぎると終盤どうなるか、身をもって知ってもらった方がよい。

案の定、折り返し地点あたりで、彼は表情が厳しくなり、口数が極端に減った。ゴールが近づき、いよいよ追い込みに入ろうかというとき、ようやく口を開き、「あとどのくらいですか?」と聞いた。左手のGPS時計ではあと800メートルである。だが、彼の表情を見ると、そうは言いづらかった。私はかなりおおざっぱに「あと500メートルくらいかな」とごまかした。

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