リビア大統領選、実施は困難 東西の対立深刻化

【カイロ=佐藤貴生】中東のリビアで24日に予定される大統領選の実施が困難な情勢となっている。東西に分裂した勢力の対立で選挙法が整わず、21日朝の時点で候補者リストも公表されていない。「アラブの春」の始まりを告げた反政府デモでカダフィ独裁体制が崩壊してから10年。内戦が続いたリビアの正常化に向けて国連などが選挙実施を求めてきたが、混乱は当面、収拾できそうにない。

大統領選には、東部ベンガジを拠点とする有力軍事組織「リビア国民軍」(LNA)のハフタル司令官や、故カダフィ大佐の次男セイフイスラム氏らが立候補を届け出た。

しかし、ロイター通信によると、選管は選挙関連の法整備がなされない限り候補者リストは公表しない方針を示し、選管当局者は16日、予定通りの選挙実施は不可能になったと述べた。

2011年に反政府デモでカダフィ政権が崩壊したリビアでは14年、西部の首都トリポリを拠点とする暫定政権とは別に、東部トブルクで「代表議会」が発足し、分裂状態に陥った。

19年にはハフタル氏率いるLNAが暫定政権に近いイスラム系武装勢力と衝突。LNAをロシアやエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)が、暫定政権をトルコやカタールがそれぞれ支援する代理戦争となり、内戦が泥沼化した。

LNAと暫定政権は昨年10月、国連の仲介で停戦に合意し、国際社会は大統領選を国民和解の第一歩と位置づけて実施を後押ししてきた。しかし、東西の両陣営は選挙制度などをめぐって非難合戦を続け、和解にはほど遠いのが実情だ。

12月に入ってからはトリポリの政府庁舎を一部の軍人らが包囲したり、南西部セブハで民兵らが衝突したりするなど治安が不安定化している。選挙を延期して実施したとしても結果を認めない勢力が反発し、再び混乱する可能性もある。

トリポリ大のムスタファ・ハシム教授(政治学)は電話取材に、「有権者は(現在の状況に)とても失望している。東西の対立はそれぞれの指導者らが部族や地域を重視し、大きな権力を握ろうとしていることが原因だ」とする一方、「現在は選挙を通じて民主化への道を模索している」と述べ、カダフィ体制の時代との違いを指摘した。