ガソリン販売規制も排除できぬ「悪意」

大阪市北区曽根崎新地のビルで起きた火災では、ガソリンが放火に使用された可能性が浮上した。総務省消防庁は2年前の京都アニメーション放火殺人事件を機に、購入時の身元確認などでガソリンの販売規制を強化したが、虚偽申告などの「悪意」までは排除できない。規制は性善説の側面が強く、専門家は「これ以上の厳格化は困難」とする。

揮発性が高く、小さな火でも爆発的に燃焼するガソリン。危険性は古くから知られているが、その販売方法が厳格化されたのは、令和元年7月の京アニ放火殺人事件がきっかけだ。

殺人などの罪で起訴された青葉真司被告(43)は事件直前、携行缶を持参し、ガソリンスタンド(GS)で40リットルを購入。その後、京都市伏見区の同社第1スタジオに侵入し、ガソリンをまき放火したとされ、36人が犠牲になった。

身分証提示義務

事件を受け総務省消防庁は昨年2月に改正省令を施行。容器に詰め替えてガソリンを販売する際、運転免許証やマイナンバーカードなど身分証の提示を求めて使用目的を確認した上で、販売記録の作成を事業者に義務付けた。確認を拒むなど不審な客が来た場合、警察への通報も求めている。

このほか容器入りのガソリンを販売するホームセンターやインターネット事業者についても、10リットル以上を目安に同様の確認を要請している。

ただ規制強化が進んでも、同種事件を完全に防ぐことは難しい。

徳島市では今年3月、ご当地アイドルグループのライブが行われていた雑居ビル内にガソリンがまかれ、放火される事件が起きた。現住建造物等放火などの罪で起訴された男は事件当日、徳島県内のセルフ式GSでガソリン約15リットルを購入し、携行缶に入れていた。逮捕後には「京アニ事件をまねた」との趣旨の供述もしていた。

登録制求める声

今回の大阪の放火事件でも、谷本盛雄容疑者(61)が購入に必要な身分証をGSで提示したことが明らかになっている。「バイクに使う」。購入の理由をこう説明したとされるがバイクの所有は確認されておらず、虚偽の可能性がある。またしても規制の実効性が問われる結果になったといえ、業界団体関係者は「事件防止のための規制と理解し、協力してきたが…」と頭を抱える。

石油元売り業者らでつくる石油連盟は昨年の規制強化にあたり「給油所側だけの防犯対策で抑止は困難」として、消防庁に携行缶などでの購入者の登録制度などの構築を求めていた。消防防災行政を専門とする東京理科大総合研究院の小林恭一教授は「故意の犯罪まで防ぐことはできない。これ以上の厳格化は難しい」と話す。ガソリンは車以外にも、農機具や芝刈り機など、その用途が幅広く、人手不足のGSでは確認作業の強化による負担増を懸念する声が根強い。


■大阪市がビル5400棟を緊急点検