たばこと健康

危険な妊娠中の喫煙 胎盤への血流減少

女性の妊娠中の喫煙は胎児の発育などに大きな影響を与える。胎児は胎盤を経由して発育に必要な栄養や酸素の供給を受ける。たばこの煙に含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があり、胎盤や子宮の血流を減少させる。また、一酸化炭素は赤血球に含まれるヘモグロビンとの結合力が酸素の200倍以上もあるため、血液の酸素運搬を妨げる。喫煙により子宮や胎盤への血流が減少すると、前置胎盤、流産や早産、低出生体重の他、出生後も新生児突然死症候群などリスクが高まるといわれている。

出生時の体重が2500グラム未満の新生児を「低出生体重児」という。平成30年3月に厚生労働省から発表された「健やか親子21(第2次)に関する調査報告書」によると、新生児に占める低出生体重児の割合は昭和50年代には5%程度だったが、最近は9%を超える水準となっている。平成28年の低出生体重児の割合は、全国が9・4%、群馬県9・0%であった。

同じ報告書に掲載されている「妊娠中・育児中の親の喫煙率」の全国データをグラフで紹介する。喫煙する女性も多くは妊娠中に禁煙するが、喫煙を継続する人もおり、妊娠中の喫煙率は2・9%、育児中の母親の喫煙率は、3・4カ月児で4・0%、1歳6カ月児で7・2%、3歳児で8・7%と時を経るごとに増加していることが分かった。群馬県の母親は、妊娠中2・6%、育児中の3・4カ月児で3・7%、1歳6カ月児で6・8%と全国よりも喫煙率が低かったが、3歳児では9・1%と全国を上回っている。

20代から40代は育児中の世代に相当するが、これらの年代の平成28年における全国の喫煙率と、家庭内の受動喫煙率を調べた結果を表(文末)に示す。データは厚生労働省の国民健康栄養調査から引用した。20代、30代の女性喫煙率を大ざっぱに10%程度とみると、妊娠中の喫煙率は3%弱であるので、妊娠により禁煙するのは喫煙女性の7割程度と推測される。

一方、父親の育児中の3つの時期のデータはいずれもおよそ38%で、母親のような変化は見られない。配偶者の妊娠および育児が父親の喫煙に影響しているとは思えない。

これらの結果から家庭内における子供の受動喫煙が心配される。表(文末)の下段は、家庭内での受動喫煙を経験した人の割合である。女性の家庭内受動喫煙率は全年代を通して26%程度で変化していない。これは父親の家庭における喫煙が原因となっていると考えられるので、子供も同程度の受動喫煙をしているものと考えてもよさそうだ。

男性の家庭内受動喫煙は年代が進むごとに低下している。女性の喫煙率は高くても10%台なので、男性の受家庭内受動喫煙の原因の多くは、親世代によるものかもしれない。

今回調べた範囲では妊娠中の受動喫煙に関わるデータは見つからなかったが、女性の家庭内受動喫煙率は約26%なので、妊婦も4人に1人が受動喫煙の被害を受けている可能性が高い。

これから結婚するカップルには、生涯の愛とともに、ぜひ生涯の禁煙も誓い合っていただきたい。次世代の健やかな発育のためにも。

(高崎健康福祉大教授 東福寺幾夫)

■20代、30代、40代の喫煙率・家庭内受動喫煙率

(平成28年、単位:%)

20代 30代 40代

喫煙率 女性 6.3 13.7 13.8

男性 30.7 42.0 41.1

受動喫煙率 女性 26.3 26.3 25.9

(家庭内) 男性 26.4 19.0 15.7

注)喫煙率:現在習慣的に喫煙している人の割合

受動喫煙率:月に1度以上受動喫煙を経験した人の割合

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