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湯豆腐 京の冬を温める逸品

大豆の香りが漂う手作り湯豆腐
大豆の香りが漂う手作り湯豆腐

京都を代表する鍋の一つといえば湯豆腐。精進料理がルーツとされ、底冷えする古都の冬にうってつけの一品だ。創業から386年もの歴史を持つ湯豆腐店「総本家ゆどうふ 奥丹清水(おくたんきよみず)」(京都市東山区)では、職人が営業当日に豆腐を仕上げるというこだわりを貫く。シンプルな味わいなだけに、何よりも重要なのが豆腐そのものの質の高さ。なめらかな舌触り、ほどよい弾力、風味-。老舗の矜持(きょうじ)が垣間見えた。

ルーツは精進料理

古い街並みや商店、観光客でにぎわう世界遺産・清水寺近くの二寧坂。登りきったあたりに構える同店は、木造の古い外観からもその歴史を感じさせる。

創業は寛永12(1635)年。別店がある南禅寺(同市左京区)付近で始まった精進料理店がルーツで、名物として提供されていたのが豆腐だという。

16代目当主の小倉忠輔(ただすけ)さん(47)は、11年前に先代だった父の死を機に跡を継いだ。物流関係の会社を経営していたが、「長年親しんでもらえた豆腐を失いたくない」と一念発起。店で働いていた職人に弟子入りし、研鑽(けんさん)を積んだ。

すべて手作り

豆腐は当日の営業に合わせて提供するため、店の地下にある工房で早朝から作り始める。「最も合う品種」として、原材料の大豆は滋賀県産のフクユタカを使用している。

手作り湯豆腐のコース料理(税別4千円)で提供する豆腐は全て手作りだ。前日から水に浸した大豆をうすですり潰してできる「呉(ご)」と呼ばれるペーストから、豆乳を生成。固めるためのにがりを混ぜる際には、かたさが均等になるよう、おけの中でへらを回転させる回数を決めている。「回転の力加減や速度によっても、食感が変わってしまうんです」と小倉さん。

大豆をすり潰す作業を行う「総本家ゆどうふ 奥丹清水」当主の小倉忠輔さん
大豆をすり潰す作業を行う「総本家ゆどうふ 奥丹清水」当主の小倉忠輔さん

押しかためて余計な水分を取り除くと、木綿豆腐の完成だが、適切なかたさかどうか判断するには、長年培った手の感覚に頼る。「同じようにおいしいものを作って提供する」が職人としてのポリシーだ。

弾力と香り

七輪で沸々(ふつふつ)と温められた昆布だしの鍋に浮かぶ豆腐。おたまですくった感覚は、見た目の大きさよりずっしりと重く感じる。

「総本家ゆどうふ 奥丹清水」の手作り湯豆腐のコース料理(豆腐は2人前)
「総本家ゆどうふ 奥丹清水」の手作り湯豆腐のコース料理(豆腐は2人前)

食べやすい大きさに箸で切る際にもその弾力に驚きつつ、「まずはそのままで」と勧められるがまま口に運ぶ。口内に一気に広がる大豆の香りと、豆腐とは思えないほどのしっかりとした食感。機械では表現できない手作りならではの風味だという。

飽きさせない味わいに食べ切ってしまいそうだが、薬味のネギとサンショウ、秘伝のだしも忘れてはならない。コクのあるだしをベースに、サンショウのぴりっとした風味と、豆腐のほんのりとした甘さが合わさって味わい深い。

窓の外に目を向けると、当主自らが剪定(せんてい)している約600坪の庭園が広がる。春は桜、秋は紅葉といった四季を味わうことができ、身も心も満たされる。

平日は午前11時~午後4時半(ラストオーダーは同4時)、土日・祝日は午後5時半(同5時)。木曜定休。問い合わせは同店(075・525・2051)。

世界の「TOFU」に

全国豆腐連合会(東京)によると、豆腐は中国が発祥で、日本へは奈良時代に遣唐使によって伝えられたとされる。室町時代には、僧侶が食べる精進料理として全国的に普及した。

庶民の間に流通するようになったのは江戸時代。天明2(1782)年に刊行された豆腐の料理本「豆腐百珍」は続編も出るほどの人気を呼び、江戸時代の料理本ブームの火付け役になったという。地域で独自に作り上げられる豆腐も誕生。沖縄の「島豆腐」や北陸などでみられる「堅豆腐」が今も根付いている。

「畑の肉」とも呼ばれる豆腐はタンパク質や脂質といった栄養素が豊富。良質な栄養素が動脈硬化を防ぐとされ、体の健康を維持・調節する「機能性食品」としても認識されるように。低カロリーなのに満腹感を得られるダイエット食品として、スイーツなど新たな活用方法も増えている。

大豆の文化が乏しかった欧州からも熱い視線が注がれる。「SDGs(持続可能な開発目標)」を基に、動物性タンパク質から植物性タンパク質に移行する流れの中で、肉の代替品として脚光を浴び、今では世界的に「TOFU」の認知度が高まっている。(森西勇太、写真も)