「チェンバレン」という名前が米紙ワシントン・ポストの記事の見出しに大きく載ったのには驚いた。バイデン米大統領の名前が並んで記されていたからだ。12月10日の記事だった。
ネビル・チェンバレンといえば第二次世界大戦直前の英国の首相である。1938年のドイツのヒトラーとのミュンヘン会談でドイツへのチェコスロバキアの一部割譲を認め、ドイツを増長させ、大戦を招いた世紀の失策の政治家として知られる。
このときのチェンバレンの対応は「Appeasement」と呼ばれた。この英語は「宥和」と訳される。「融和」とは異なり、相手の要求が不当でも衝突を避けるために許す対応を指す。国際関係では当面の対決への恐れから譲歩し、かえって相手を大胆な侵略などに走らせる危険な態度だとされる。当時のドイツは英国のこの「宥和」から、ポーランド侵攻に踏み切ったとされる。