【ソウル=時吉達也】来年3月に投開票される韓国大統領選で、与野党の主要2候補の家族をめぐるスキャンダルが相次いで表面化し、両陣営が非難合戦を展開している。過去には大統領との関係を誇示した家族による不正行為が歴代政権の〝致命傷〟となっており、今回の選挙戦でも「家族リスク」が話題の中心に上っている。
「息子の愚かな行動に、父として頭を下げ謝罪する」。与党「共に民主党」候補の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道(キョンギド)知事は16日、韓国紙が長男の違法賭博疑惑を報じたことを受け、事実を認めた。
報道によると、長男は昨年7月まで約1年半、インターネット掲示板に違法賭博の参加記録などを100件以上投稿。韓国国内の賭博場に出入りしていたことも明らかになった。投稿時のニックネームが会員制交流サイト(SNS)のIDに類似していたことから、本人と特定された。
弁護士出身の李氏は11月にも、おいが交際相手とその母親を殺害した事件の弁護を担当した過去について公の場で初めて言及し、大きく報じられた。この時には事件を「デート暴力」など遠まわしに表現したことなどで批判を浴びており、今回は「迅速に公開謝罪をしたほうが選挙戦略上プラスになる」(中央日報)との狙いから、報道直後に謝罪。幕引きを急いでいる。
一方、保守系最大野党「国民の力」側では前検事総長、尹錫悦(ユン・ソンヨル)候補の妻の経歴詐称疑惑が発覚。妻本人が事実の一部を認め謝罪した。今回の問題に先立ち、妻の母は7月、病院運営を通じ多額の給付金をだまし取った詐欺罪などで1審実刑判決を受けている。
尹氏陣営は経歴詐称について「尹氏との結婚以前の問題」と強調するが、与党は「国家元首の配偶者として外交に携わり、国家予算も投入される以上、検証は当然だ」と追及を強める。
韓国では歴代、政権末期に大統領の家族をめぐる不正捜査が加速、政権の「レームダック」(死に体)化を招いてきた。金泳三(キム・ヨンサム)氏から李明博(ミョンバク)氏まで4大統領連続で、収賄罪などで兄弟や息子の実刑が確定。朴槿恵(パク・クネ)氏は家族と距離を置いたが、友人による国政介入事件で弾劾された。
明知大の申律(シン・ユル)教授は「権力が集中する大統領の家族は常に関心の的だが、就任前からこれほど注目が集まるのは初めてだ」と指摘。「SNSの普及で、情報収集が容易になったことが影響している」と分析した。