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「神話の里」生活支え ガタンゴトン JR日南線 全線再開

華やかなセレモニーから一夜明け、日向灘を背に走る車両。約3カ月ぶりに日常の風景が戻った  =宮崎県日南市(萩原悠久人撮影)
華やかなセレモニーから一夜明け、日向灘を背に走る車両。約3カ月ぶりに日常の風景が戻った  =宮崎県日南市(萩原悠久人撮影)

あかね色のグラデーションに染まる曙(あけぼの)の空。河口に架かる橋が、鏡のように穏やかな水面に映る。2両編成の気動車がガタンゴトンと音を立て、ゆっくりと駆け抜けていった。

南宮崎駅(宮崎市)と志布志駅(鹿児島県志布志市)を結ぶJR日南線は昭和38年に開通した。単線で全長は88・9キロ。宮崎県南東部の日南海岸沿いや、宮崎と鹿児島県境の鰐塚(わにつか)山地を約2時間半かけ縫うように走る。

沿線のいくつかが神話「海幸彦と山幸彦」の舞台として伝わり、景勝地「鬼の洗濯岩」や田園風景など、変化に富んだ景色を楽しめる観光路線の顔を持つ。その一方で開通以来、地元の足として住民の生活を支えてきた。

今年9月の台風14号による土砂崩れで、日向灘に臨む小内海(こうちうみ)駅や線路が被災。区間の大部分が不通となっていたが、今月11日に全線再開した。

「運休期間は代替のバスもあったが、お気に入りの車窓が戻ってうれしい」。宮崎市の大賀友子さん(69)はほほ笑んだ。地元の名産、キンカンを栽培する実家の手伝いに行く際、日南線を利用しているという。

3カ月ぶりの全線開通の日。セレモニーが行われた日南市の飫肥(おび)駅には住民ら約100人が集合。観光列車「海幸山幸(うみさちやまさち)」が入線すると旗を振って出迎え、地元の踊りが披露された。

以前に比べると、通学で利用する学生など乗降客も減少。このローカル線の将来は明るい話題ばかりではない。だが、集まった人々の笑顔からは、住民からも観光客からも愛情を寄せられる路線の確かな〝底力〟が感じられた。(写真報道局 萩原悠久人)

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