「人生救ってくれた」 院長死亡、患者の願い届かず

火災が発生したビルの前で手を合わせる男性。現場には多くの花束が手向けられている=19日午後、大阪市北区(永田直也撮影)
火災が発生したビルの前で手を合わせる男性。現場には多くの花束が手向けられている=19日午後、大阪市北区(永田直也撮影)

大阪市北区のビル火災で火元となった4階の心療内科「西梅田こころとからだのクリニック」の西澤弘太郎院長(49)の死亡が19日、確認された。一人一人に寄り添う診察で、多くの患者に慕われていた西澤院長。無事を願う患者らの思いは届かなかった。

「先生には人生を救っていただいた。悲しくて胸が張り裂けそうだ」

クリニックに通っていた大阪府枚方市の自営業の男性(55)は沈痛な面持ちで言葉を絞りだした。

メンタル面に不調を抱えていた男性は、別の心療内科にも通院した経験があるが、平成28年ごろに西澤院長に出会ってからはクリニックに毎月通院。「西澤先生は一番しっかり話を聞いてくれた。自分を責めていた時期もあったが、先生と話すと気持ちが楽になった。いくら感謝しても足りない」と話す。

クリニックのホームページによると、西澤院長は埼玉医科大を卒業後、大学病院や父親(78)の病院で経験を積み、27年10月にクリニックを開業した。西澤院長の人柄にひかれ、長く通院を続ける患者も多かったという。

大阪市内に住む小学校教諭の男性(53)は、発達障害に悩んでいた4~5年ほど前にクリニックに初めて足を運んだ。「どこに行ってもうまくやれなかったが、西澤先生は『発達障害でもええやん。自分らしく生きたらいい』と言ってくれた」。

それから2週間に1度のペースで西澤院長と言葉を交わし、昨年のクリスマスの時期にも診察を受けていた。「1週間ほど前に、今年もまたクリスマスはここで一緒に笑いましょう、と冗談を言い合ったばかり。あんなにいい先生がいなくなるなんて」と唇をかんだ。

クリニックのホームページに《自分自身が患者様の立場になった時にこうであればいいなと思い診療してまいりました》とつづり、その言葉通り親身になって患者と向き合い続けてきた西澤院長。3年前からクリニックに通っていた大阪市此花区の中学教諭の女性(57)は「患者だけではなく、その後ろにいる人たちも救ってくれた先生だった」と感謝を口にした。