ビジネスパーソンの必読書

情報工場「SERENDIP」編集部

「今年の漢字」は「金」に決まった。令和3年を振り返り、自分に金メダルを与えたい成果を探してみてはいかがだろうか。

(情報工場「SERENDIP」編集部)

最新の研究成果

『南極の氷に何が起きているか』杉山慎著(中公新書)

地球温暖化で南極の氷が融(と)け、海面が上昇して陸地の一部が沈む、という危機は以前から囁(ささや)かれている。実際に今、南極はどうなっているのか、最新の観測・調査・研究成果を紹介。

令和3年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告では、南極で氷が減り、21世紀末までに海水準(陸地に対する海面の相対的な高度)が2メートル近く上昇する可能性も否定できないとされている。

南極大陸を覆う厚い氷は「氷床」と呼ばれる。それはゆっくりと沿岸部に向かって流れる「氷河」でもある。沿岸部まで流れた氷は、氷床とつながったまま陸地を離れ、海に浮く「棚氷」となることが多い。

南極の氷が減るのは、氷床の表面が融けたのではなく、温暖化で暖かくなった海水が棚氷を融かし、せき止められなくなった氷河の流れが速くなったからだという。

氷の減少が以前の予測よりも激しくなり、今後さらに加速するかもしれないことを受け止める必要がありそうだ。

代替できない価値

『NFTの教科書』天羽健介、増田雅史編著(朝日新聞出版)

デジタル分野の新たなトレンドとして注目されるNFT。「ノンファンジブル・トークン」の略で「代替不可能なデジタル資産」を指し、アートなどの取引に使われる。その全体像を多角的に解説。

NFTには、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の基盤技術でもあるブロックチェーンが使われる。暗号資産は代替可能だ。Aさんが所有する1ビットコインには、Bさんの持つ1ビットコインと同じ価値がある。それに対しNFTの価値は、個々のNFT唯一のものだ。

例えば、NFT化されたデジタルアートは第三者によるコピーや改竄(かいざん)ができず、唯一の価値が守られる。そのため、希少価値のある作品として高額で取引されることもある。

NFTには、アート、音楽、ゲームといったコンテンツビジネス、スポーツや芸能のファンビジネス、さらにメタバースと呼ばれる仮想空間での活用など、幅広い可能性がある。斬新なアイデアを期待したい。

ブランドを再建

『マリメッコの救世主キルスティ・パーッカネンの物語』ウッラーマイヤ・パーヴィライネン著、セルボ貴子訳(祥伝社)

フィンランドを代表するブランド「マリメッコ」。カラフルなプリントの生地は日本でも人気があるが、かつては赤字続きだった。1990年代にマリメッコを再建し、名声を博したキルスティ・パーッカネン氏の半生を描く。

29年生まれのパーッカネン氏は、69年に「女性だけの広告代理店」を設立し成功を収める。そして91年、伝統あるマリメッコを買い取り、オーナー社長として改革に着手する。

パーッカネン氏は落ち着いたデザインで知られていたマリメッコに、その良さを残しながらも「派手さ」「明るさ」を加え、華々しいファッションショーも開催した。それが、当時不況にあえぐフィンランド人を励まし、共感を生んだ。

レトロ柄の復活、パーッカネン氏のカリスマ的魅力も相まって、マリメッコは赤字経営を脱し、株式上場も果たす。

ビジネスの成功には、人々の感情に寄り添い、それを動かすことが一番の近道なのかもしれない。