台湾がどよめいたオンライン砥部焼チャレンジ

愛媛県砥部町と台湾の会場をオンラインで結んで行われた砥部焼絵付け体験会
愛媛県砥部町と台湾の会場をオンラインで結んで行われた砥部焼絵付け体験会

愛媛県砥部(とべ)町の陶磁器で国の伝統工芸品「砥部焼」のオンラインによる絵付け体験会が、台湾で初めて行われた。割れにくく、普段づかいの磁器として定評がある砥部焼。戦前には台湾でも流通していたという。今年5月から台湾で砥部焼の通信販売が始まっていることから、そのPRを兼ねるとともに、日台相互の観光物産、窯業技術、人材などを含む文化交流の拡大も視野に入れた事業となっている。

主催の砥部焼販売協同組合理事長、泉本明英さんが経営する砥部焼観光センター「炎(えん)の里(さと)」(千山窯)。台湾側は日台の貿易、商工業の交流を目的に2012年に設立された経済団体「台湾知日協会」が協力して今回の取り組みが実現した。台湾には、戦前から日本によってさまざまな陶磁器の製造技術が導入されたといい、かつては砥部焼も流通していたという。

台中市の会場と結んで12月3日に行われた初めての絵付け体験には約20人が参加。泉本さんは「砥部焼の器は砥部の山の中から産出する石を原料に作られています。今日、描いた器を焼き上げて使ってもらい、日本の文化に触れてもらえたら」とあいさつ。240年の歴史を持つ日本の伝統工芸であり、約百年前に技術が台湾に伝えられた-と砥部焼と台湾とのかかわりを紹介した。

砥部焼観光センターから台湾の参加者を指導したのは、陶工の渡辺隆さんと藤野明紀さん。オンラインの絵付け体験は国内ではすでに行っているものの、海外会場はベテランの2人にとっても初めてだったという。

絵付けを指導する陶工の渡辺隆さん(右)と藤野明紀さん
絵付けを指導する陶工の渡辺隆さん(右)と藤野明紀さん

藤野さんが「鉛筆で軽く目印をつけ、筆を立てて習字の感覚で書いていきます」と説明。素焼きの大ぶりの蕎麦(そば)猪口(ちょこ)を用い、渡辺さんが慣れた手つきで砥部焼を代表する唐草模様と、梅の絵をそれぞれ短時間で描くと、台湾の会場から驚嘆のどよめきが起こっていた。

「簡単に描いているように見えますが、筆で描くのはとても難しい。初めての方は思い思いの絵を描いてください」と藤野さんが呼びかけ、台湾会場では参加者たちがあらかじめ砥部から送っておいた素焼きを手に、絵付けにチャレンジした。

モニター画面を食い入るように見つめ、「素焼きはとても割れやすいので気をつけて取り扱ってください」「絵の具は沈殿しやすいのでよく混ぜて使ってください」「描いたところを持たないでください」とアドバイスを送っていた藤野さんは、「いかに言葉で説明するかを考えた。通訳を挟むので難しかったが、台湾の人たちの反応が新鮮だった」と話していた。

砥部焼の原料となる陶石。砥部焼観光センター「炎の里」に展示されている
砥部焼の原料となる陶石。砥部焼観光センター「炎の里」に展示されている

渡辺さんは「作品を見ると、みんなちゃんとできていた。思った以上にうまくいった。ある程度、考えてきてくれたようで絵は良かったですよ」と台湾の人たちの絵に感心した様子だった。

台湾会場で参加した男性は「初体験で不得意な絵を描いたが、本当によかった。これを機に日本の文化と触れ合う体験を増やしていきたい」と話していた。

絵付け体験は12月5日に台北市でも行われ、来年も予定している。作品は現地の窯で焼き上げ、参加者の手元に送られるという。

台湾知日協会の宋明吉理事長は「素晴らしい文化を体験でき、本当にうれしい」と述べ、アフターコロナを見すえ「来年は砥部町と台湾で乾杯したい」と笑顔で話した。(村上栄一)