「ナトリウムイオン電池」は、EVの新たな動力源になるか

バッテリー大手が積極推進

一方、カリフォルニア大学サンディエゴ校のメンは、一般にナトリウムイオン電池の安全性は「完璧ではない」と指摘した上で、安全性は個々の電池の設計によるのだと語る。要はバッテリーの正極と電解質の正しい組み合わせに尽きるのだ。クルマに搭載されているようなエネルギー密度が高いバッテリーや、送電網向け蓄電池のような長期間にわたって放電するために設計されたバッテリーでは、火災の危険を減らすことはかなり難しい。

CATLもナトリウムイオン電池について、正極の材料にニッケルを使用せずにより高いエネルギー密度を保持しており、安全な設計であるとの見解を示している。同社によると、ナトリウムイオン電池はEVの中級モデルで普及が進むリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)に匹敵するという。

またCATLは、ナトリウムイオン電池をリチウムイオン電池と組み合わせることでエネルギー密度の低さを補うという。CATLの発表によると、同社の目標はこの2種類の電池を製造過程においてもほぼ互換の仕様にすることで、広範かつ複雑なサプライチェーンにナトリウムイオン電池をリチウムイオン電池と並行して組み込んでいくことにあるという。

だが、それはすごいことなのだとメンは指摘する。ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池のそれぞれの設計の原価比較は、ナトリウムイオン電池の生産規模の拡大に左右されるからだ。

ナトリウムイオン電池の生産規模の拡大は、CATLのような大手メーカー次第である。天然資源分野を専門とするコンサルティング会社のウッドマッケンジーの推定によると、ナトリウムイオン電池はLFP電池よりも製造コストが40%少なくて済むという。

主な理由は材料が安価だからだが、その推定が現実になるのはナトリウムイオン電池の生産が増えた場合に限られる。ウッドマッケンジーによると、今後数年は依然としてリチウムイオン電池が主流になる見込みだ。

目指すは全固体電池の実用化

ナトリウムイオン電池のような技術のほか、亜鉛やバナジウムなどのリチウムの代替になる材料は、大規模なバッテリー産業がない米国のような国にとって産業を立ち上げるチャンスでもあるとカリフォルニア大学サンディエゴ校のメンは指摘する。

メンをはじめとするカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者は、全固体ナトリウムイオン電池の製造技術を開発する取り組みをこのほどスタートさせた。全固体ナトリウムイオン電池は次世代の技術で、既存の電池と比べると安全性もエネルギー密度もはるかに高い。

とはいえ、全固体ナトリウムイオン電池の実用化はまだ先の話だ。研究者やスタートアップは全固体リチウムイオン電池の商用化に向けて奮闘しているところであり、ナトリウムイオン電池の場合は資金調達の面でも注目度でもリチウムイオン電池にはるかに及ばない。

だがメンによると、将来に向けてこうした計画を進めることにも、見込みのなさそうなものに取り組み続けることにも価値がある。「もっと面白い発見がまだまだできるはずです」と、メンは言う。

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