ゲーム「DOOM」の開発元が、メタルバンドの名称に異議 いったいなぜなのか

ソーシャルメディアで悲観的な内容のニュースばかりを読む「ドゥームスクロール」という行為が社会問題になっている。ある男性が、この言葉をメタルバンドの名称にしようと商標登録を申請したところ、思わぬところから「待った」がかかった。90年代に人気を博したゲーム「DOOM」の開発元だ。いったいなぜなのか?

TEXT BY CECILIA D’ANASTASIO

WIRED(US)

ダスティン・ミッチェルは地元のニュースに目を通していたとき、思いがけない記事からひらめきを得た。

記事が報じていたのは、政治にまつわる陰謀論を唱える「Qアノン(QAnon)」を信奉する女が、アリゾナ州スコッツデールの家電量販店でマスクの陳列棚を発作的に破壊したという事件だった。そうした行為に至った理由について女は、「ただ“ドゥームスクロール”していただけだった」と語っている。つまり、ソーシャルメディアで悲観的な内容のニュースばかりを読む「ドゥームスクロール」と呼ばれる行為を繰り返していたことを告白したのだ。

この記事を読んだミッチェルは、ピンときた。テキサス州ダラスのメタルバンドのギタリストである彼は、「これはバンドにぴったりの名前だ」と考えたのだ。「よし、この名前を採用しよう」

普段はアマゾンの従業員として働いている38歳のミッチェルは、彼自身がドゥームスクロールをして過ごすことはないのだと語る。普段はネットにあまり接していないし、ときどき地元のニュースは公共放送のナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)などでチェックするが、TwitterやRedditは新しい機材のチェックに使う程度だという。

「ドゥームスクロール」というアイデアに刺激を受けたミッチェルは、ようやく自身のプログレッシヴ・スラッシュメタルバンドを新たに始動させる踏ん切りがついた。バンド名を確定させるため、彼は今年2月に米特許商標庁(USPTO)に「doomscroll」の商標を初めて申請したのである。

それから数カ月後、「30日以内に商標が認められ、のちに付与される」とのメールがUSPTOから送られてきた。その時点で「ドゥームスクロール」という名称は守られ、バンド名やエンターテインメントの資産として利用できるのはミッチェルだけとなった。

いつの日か、ドゥームスクロールは人々の心を揺さぶるバンドになるだろう──。ミッチェルはその日を夢見ながら、「www.facebook.com/doomscroll」のアドレスを登録した。

ゲーム会社からのメッセージ

そして2021年10月、ミッチェルがベッドの横でギターを適当に弾きながら、寝る前にメールチェックをしようと思い立ったときのことである。受信ボックスを開くと、ある弁護士からのメッセージに気付いた。

「ミッチェル様」から始まるメールには、次のように書かれてあった。「わたくしどもの法律事務所は、ビデオゲーム『DOOM』および関連の商標を保有するid Software LLCの代理人を務めています」

このメールが送られてきた10月13日は、id Software LLCもしくは任意の人物が、ミッチェルが「doomscroll」という商標を申請したことに異議申し立てができる最終日である、と文章は続いていた。その上で弁護士は、期限の延長に合意するようミッチェルに要求してきた。延長が認められれば、ミッチェルとDOOMのデベロッパーは法的措置が下される前に、互いに和解に至るための時間を確保できるというわけだ。

ミッチェルはすぐに不思議な気持ちになったが、少し不快な印象も受けた。「DOOM」がゲーム界を席巻した1993年当時、彼は10歳だったのである。

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