主張

森友訴訟終結 国民への説明責任生じる

国側が請求を認諾したことについて会見で説明する赤木雅子さんの代理人弁護士=15日、大阪市北区
国側が請求を認諾したことについて会見で説明する赤木雅子さんの代理人弁護士=15日、大阪市北区

「認諾」とは、民事訴訟で被告側が原告の請求を正当と認め、裁判を終わらせることをいう。

学校法人「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書改竄(かいざん)問題で自殺した近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんの妻が国に損害賠償を求めた訴訟で、これまで請求棄却を求めて争ってきた国側が一転して「認諾」の手続きを取り、約1億円の賠償請求を受け入れた。

国家賠償請求訴訟で国が請求を認諾するのは極めて異例だ。事前の通告もなく、突然表明された認諾により、真相究明の場としての国との訴訟は打ち切られ、高額の賠償金のみが支払われる。

国側は認諾の理由を「いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではなく、決裁文書の改竄という重大な行為が介在している事案の性質などにかんがみた」とし、妻は「負けたような気持ちだ。真実を知りたいと訴えてきたが、こんな形で終わってしまい、悔しくて仕方がない」と述べた。

認諾は訴訟を強制終了させる、いわば奇策ともいえるが、原告側の同意は要せず、手続き上の問題はない。原告側は訴訟当初から国側が認諾する可能性を懸念する発言をしていた。

高額の賠償請求は認諾を防ぐためともされていたが、国側はあっさりとこれをのみ、訴訟の終結を優先させた。妻が「なぜ夫が死ななければならなかったのかを知りたかった。お金を払えば済む問題ではない」と憤った気持ちは、十分に理解できる。

岸田文雄首相は16日の参院予算委員会で、訴訟について「ご遺族の気持ちを考えると痛恨の極みだ」と述べるとともに、「森友問題について真摯(しんし)に説明責任を果たしていくことを指示した」などと述べた。行動と発言が、あまりに乖離(かいり)してはいないか。

約1億円の高額賠償の原資は国庫であり、税金である。

提訴から約1年9カ月を経て主張の手のひらを返し、受け入れに転じた理由の説明責任は、納税者である国民に対しても生じる。木で鼻をくくったような釈明では納得を得られない。

だいたい、いたずらに訴訟を長引かせてきたのは、赤木さんが改竄の過程をまとめた「赤木ファイル」の開示をめぐり、不誠実な対応を繰り返してきた国側の責任が大きい。改めて国は、妻や国民に説明責任を果たすべきである。

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